上場するとついつい多めに人を
採用してしまう理由とは?

 人材採用においても、上場が大きな影響をもたらします。
 上場企業と非上場企業に大きな差があると考えている人は多く、上場後は募集をかけるとそれまでの10倍以上、ときには100倍を超える応募者が集まることもあります。

 応募者の学歴も全般に高くなるため、それまで応募者集めに苦労していた人事担当者は大喜びです。経営者も、「今年の新卒採用は国立大学の学生がこんなに増えました!」などと聞けば、「自分の会社で働きたいという優秀な人がたくさんいる」とうれしく感じるものでしょう。

 このような場面で、「これは『アクセルを踏め』という神様の啓示だ」と思い込んでしまう経営者は少なくありません。上場を果たすほどの人は、もともと「ここぞ」というチャンスの場面で思い切りアクセルを踏むようプログラムされているものなのです。

 すると、「企業にとっては、人が命。せっかくたくさん優秀な学生が応募してきたのだから、本当は10人を採用する予定だったけれど、今年は20人に内定を出そう」などということになりがちです。

 しかし、新人を大量に採用した場合、入社1年目はコストが経営に重くのしかかります。最初から活躍できる新人などいるはずがなく、採用した分だけ売り上げが伸びるわけではないのに、人件費はしっかりアップするからです。

 また、上場すると良い人材が集まるというのは一般的な考えですが、実は「本当に会社にとって必要な人が応募してきているのか」と疑ってかかる必要があります。というのも、「上場企業だから」という理由で応募してくる人は、未上場企業なら同じ会社でもチャレンジしない人である可能性があるからです。

「この会社のために頑張りたい」という人ではなく、「会社に面倒を見てもらおう」「この会社なら安心だ」という”ぶら下がり体質”の人が増えることは、会社にとって好ましいことではありません。