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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

「戦おう!」と国民を鼓舞するマケインは、米国の停滞を救えるのか

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第9回】 2008年9月17日
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 次期アメリカ大統領候補を決める共和党大会が9月1日からミネソタ州セントポールで開催された。この大会は二つのドラマで迎えられた。ひとつは、メキシコ湾を北上する大型ハリケーンが9月1日にニューオーリンズを直撃する形勢にあり、また大きな被害が出ると予想されたこと。そのために、初日の大会は当初日程を短縮して行われた。

 もうひとつのドラマは、前週末に副大統領候補にアラスカ州の現職女性知事が指名されたことだ。国政の世界ではまったく無名の新人であるとともに、共和党初の女性副大統領候補である。民主党の副大統領候補にヒラリー・クリントン上院議員が選ばれなかったので、女性票集めを狙った選挙戦術と見られた。

 彼女の名前はセラ・ペイリン。5人の子供を持つ44歳の白人女性である。アイダホ大学を卒業しジャーナリストになるが、アンカレッジ郊外の人口5000人のワシラ市で市会議員に当選。同市の市長を6年間勤めたあと、2006年にアラスカ州知事に就任。マケイン候補は72歳と高齢である。大統領に万一のことがあれば、副大統領が大統領になる。彼女で大丈夫か。

 ニュース・メディアはこぞって彼女の「人となり」を紹介した。若い頃ミス・アラスカの美人コンテストで準優勝。5人の子供のうち末っ子は生後5ヵ月。しかもダウン症をかかって生まれてきた。17歳の娘は妊娠5ヵ月の高校生。相手の男子生徒とはいずれ結婚させると言う。アラスカ州政府の局長の解任人事を巡り、知事の権力乱用の疑いで事情聴取が行われている。なんと話題の多い女性であろうか。

 何で彼女を副大統領に指名したのか。マケインの意図がだんだん見えてきた。ひとつは女性票の確保。もうひとつは共和党保守層の支持を取り付けるためである。アメリカでは「中絶」が争点のひとつである。彼女が第五子を妊娠中にダウン症と分かっても、中絶せずに生んだ。これが宗教色の強い保守層に猛烈にアピールするのである。

 大会3日目に彼女が副大統領候補の受託演説をした。スピーチライターが作り、何回も練習して発表するのだから、おかしな演説には成りようもないが、これがなかなかの演説なのである。アラスカでの自分の経験と政治信条を披露し喝采を浴びた。アメリカ国民はテレビの前に釘付けになった。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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