マーガレット・サッチャー元英国首相がお亡くなりになった。元々、私が英国留学を志した理由は、サッチャー氏の指導力へのあこがれであった。また、会社を辞めてから競争社会に身を置いた私にとって、「サッチャリズム」という個人主義・自由主義の思想は、生き方の指針であった。私の人生に最も影響を与えた人物であったといっても過言ではない。謹んでご冥福を祈ります。

 サッチャー氏逝去のさまざまな記事を読んでみた。興味深かったのは英ガーディアン紙だ。この記事からは、世界のさまざまな国が、サッチャー氏に対して「偉大な指導者」と称えるだけでなく、複雑な感情を持っていたことがわかる。

 例えば、南アフリカではサッチャー氏がアパルトヘイト(人種隔離政策)を支持していたことに触れ、それでも「英国の他の指導者より、まだマシだった」という微妙な評価をしている。また、東西冷戦終結に関しても、ロシアや東欧圏のサッチャー評は単純ではない。チリでは、サッチャー氏がピノチェト軍事独裁政権を高く評価していたことを称えている。

 残念なのは、日本の反応を紹介した部分だろう。まず他国に比べて非常に短い。そして安倍晋三首相が、中国との領土問題を念頭に、サッチャー氏を「フォークランド紛争を解決した偉大な政治家」と評価したとしている。相変わらず一国の首相とは思えないほど、物の見方が狭いことを海外に示してしまった。せめて、中曽根康弘元首相の東西冷戦期の首脳外交の思い出話でも紹介してもらいたかった。

アベノミクス三本目の矢・成長戦略スタート:
だが「日本企業の支援=日本の経済成長」ではない

 安倍晋三内閣の経済政策・アベノミクスの三本目の矢「成長戦略」が動き出している。既に、二本の矢「公共事業」「金融緩和」で急激な円安・株高を生じ、日本国内にある種の高揚感が生まれている。一方で、二本の矢はあくまで「時間稼ぎ」に過ぎず、最も重要なのは、「成長戦略」であるという、冷静な見方も広がってきた。