大胆な緩和の発表は上首尾だったが
総裁会見で「最大の驚き」は……。

 4月4日、日銀は、黒田東彦総裁が「これまでと次元の違う」と表現する大胆な金融緩和政策を発表した。

 発表された緩和策のメニューは、マネタリーベースの2年での2倍増、購入する国債の年限長期化、ETF(上場型投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)の買い入れ保有額のそれぞれ2倍増など、内容的には市場の予想の範囲だが、いずれも規模が期待値を下回らないことと、一度に全ての政策を揃えたことで、総合的には強いインパクトを持つ政策パッケージになり、資本市場には「猛烈」と言っていいくらいの効果が表れた。

 週が変わっても効果は持続し、株価は1万3000円台に、ドル・円の為替レートは99円に乗った動きになっている(4月9日、午後現在)。

 過去の日銀の悪癖の1つである「戦力の逐次投入」から決別し、「市場の失望」を避けた、上首尾の発表だった。

 あえて違和感を言うなら、白川前総裁時代に、白川総裁の政策におおむね賛成してきた政策委員6人が、今度は簡単に新総裁・副総裁の路線に賛成したことに、ある種の不思議を感じるが、専門性や一貫性よりも「空気を読む」ことが大事なのが日本の組織であり、これには悪い面も良い面もある。

 今回は「結果オーライ」なので、彼らの存在意義や一貫性については問うまい。お歴々の「柔軟性」を評価しておこう。

 ところで、政策が発表された4月4日、筆者の驚きは、政策よりも黒田総裁の記者会見の発言にあった。

 黒田総裁は、記者会見の席で、日本の現在の株価は安すぎる、と言った。直接的に株価水準に言及したわけではないが、内容的には間違いなくそう言ってのけたのだ。