お弁当は、渡し方で味が変わる

 アルバイトで働いてくれる学生には必ず、こう伝えます。

「接客がすべての仕事の基本だから、笑顔で接客ができるようになったら、どんな仕事に就いても大丈夫だよ。お給料をもらいながら接客のスキルを磨けるなんて、いいアルバイトでしょう。がんばってね」

 私は、「お弁当は渡し方で味が変わる」と信じています。

 渡し方というのは、お客様にお弁当を手渡す一瞬の出来事ではなく、「いらっしゃいませ」から始まって商品を渡すまでの接客です。
 接客の仕方次第で、お弁当はまずくもおいしくもなります。

 私がそう言うと、「誰がどう渡したって、お弁当の味が変わるわけないじゃない!」と言う人もいます。

 たしかに、お弁当そのものの味は変わりません。

 でも、食べる人の味覚は変わるのです。
 あまりおいしくないお弁当でも、「このお弁当を売っていたおばちゃん、面白かったなあ」と楽しい気分で食べれば、それほどまずいとは感じないでしょう。

 逆に、「あのおばちゃんはムスッとしていて、嫌な感じだったなあ」と思いながら食べれば、「あのおばちゃんにこんなまずい弁当を売りつけられた」と腹が立ちます。そしてそれがクレームにつながるのです。

笑顔がなかなか出ないスタッフには、こう接する

 お客様によりおいしいと感じてもらうお弁当の渡し方の基本は、やはり笑顔です。
 ただし、笑顔のトレーニング本に載っているような不自然な笑顔ではありません。
 私は、無理に口角を上げたつくり笑顔が好きではありません。

 効果的なのは、「ゲーム感覚で駅弁を売る」という方法です。

 自分で「この駅弁を○個、○時間以内に売る」という自分ルールを決めてから仕事をすれば、その駅弁が売れたときに「やった!」という達成感が生まれます。

「次は他の人が売れないお弁当を○個売ろう」と自分でゲームの難易度を上げたりしながら、楽しく仕事ができます。

 あるいは「私が鳥めしを売るから、あなたはさば弁当を売ってね。どっちが先に売り切るか競争よ」と提案し、ゲームに巻き込んでしまいます。

 すると、駅弁を売りつつ互いの接客を意識しながら、「また鳥めしすすめている」とか、「がんばって、さば弁当を売っているな」などと心の中で思い、ニコニコ楽しくなってしまうのです。

 実際、駅弁が売れたときの達成感、面白さを知って、自然に笑えるようになったアルバイトがいました。

 彼女はいつも仏頂面で、「笑顔で接客しなさい」と言っても、ニコリともしませんでした。

 ところがある日、彼女が「別人じゃないの?」と思ってしまうほどいい笑顔で友だちと話しているのを見かけました。

「ちょっと、なんでそんなに楽しそうな顔をしているのよ。いつもムスッとしているくせに。そんなに仕事が嫌なら辞めちゃって、ずっと友だちと遊んでいなさいよ」

 と冗談めかして言いながら、「彼女も本当はあんなによい笑顔ができるんだ。どうしたら笑顔で接客できるようになるだろう?」と思いました。

 そして、「やっぱり楽しく働いてもらわなくては」という結論に達したのです。

 それからしばらくチャンスを待ちました。

 そして、ようやく彼女が駅弁を売ったときにすかさず、「お弁当が売れたとき、面白かったでしょう? その気持ちを忘れないでね!」と声をかけたのです。

 すると彼女は、「はあい」と言いながらニコッと笑ってくれました。

 それ以来、彼女はきちんと笑顔で接客できるようになったのです。

 とにかく駅弁を売る楽しさ、仕事の楽しさを一度味わってもらうことが大切なのです。仕事の楽しさを実感すれば、どんな人でも笑顔で売店に立ち、接客できるようになります。

 こうしてアルバイトは、すぐに立派な戦力になってくれるのです。

次回は4月24日更新予定です。


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三浦由紀江(みうら・ゆきえ)
JR東日本グループの株式会社日本レストランエンタプライズ(NRE、旧・日本食堂)弁当営業部上野営業支店前大宮営業所長。現・上野営業支店セールスアドバイザー。97年、44歳時にJR上野駅の駅弁販売を開始。当時の時給は800円。52歳で正社員となり、53歳時に異例の抜擢で大宮営業所長となる。就任1年目で駅弁売上を5000万円アップさせ、年商10億円超を達成。以降、所長就任4年で売上を1億1000万円アップさせる。大宮駅限定のカリスマ駅弁を20種産み出すかたわら、9人の社員と110名のパート・アルバイトを束ね、6店舗を切り盛りするカリスマ営業所長として活躍。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」、TBS「応援!日本経済 がっちりマンデー!!」でも紹介された。