株式レポート
4月10日 18時0分
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日本経済正常化を邪魔する勢力 - 村上尚己「エコノミックレポート」

4月4日に生まれ変わった日本銀行が大胆な金融緩和を採用したことをうけ、ドル円相場では1ドル100円目前のところまで円安が進んでいる(グラフ参照)。市場では円高への転換を予想する声はほぼ皆無で、100円を越えてどこまで円安が進むかが焦点となりつつある。



これまでのレポートで、1ドル90円台での円安進行は、超円高の是正が起きているに過ぎないことを紹介してきた(1月9日15日3月15日)。日本銀行が生まれ変わったことで、日本経済にとっての元凶であった超円高がようやく解消に向かっているということである。

既に株高・円安と資産市場が大きく動いているが、金融緩和がもたらす資産市場の変化が日本の経済活動を強く刺激している。こうした動きは、景気ウォッチャー調査や百貨店売上げの回復などで現れており、ようやく日本経済は正常化の道筋を辿り始めた(グラフ参照)。年初の1月4日レポートで、「2013年は日本経済の正常化がようやく始まる年」になると紹介したが、ここまではほぼ想定どおりの展開である。



今後の日本経済・金融市場を展望すると、これまでの動きを阻害するリスク要因がいくつか思いつく。まずは欧州などの海外経済の減速である。もう一つは、2014年度以降に予定されている消費増税など大規模な緊縮財政政策だろう。これらについては、別の機会にレポートでご紹介したい。

もう一つ日本経済正常化の障害を挙げると、金融緩和策の強化を実現したアベノミクスを批判するメディアや識者などの声である。これらの声の政治的影響が高まれば、アベノミクスの成功も中途半端になるリスクもありえる。特に社会的な影響力を持つ大手メディアの中には、従来の日銀の金融政策の失政が改められて、日本経済が正常化するのを気に入らないのだろうか、アベノミクスに対して批判的な論調はかなり多い。

この典型である、時事通信社(4月4日付)による「一線越えた壮大な挑戦=「通貨堕落」に懸念も―日銀緩和策」とする解説記事を以下で紹介する。

「黒田東彦総裁率いる日銀が「量的・質的緩和」に踏み切った。白川方明前総裁とは次元の異なる大胆な姿勢は株高をもたらし、市場は歓迎ムードだ。ただ、黒田日銀による壮大な挑戦は、「通貨堕落」を通じた深刻な副作用を招く恐れがある」「中央銀行としての独立性を明確にした1998年4月の日銀法改正以降、白川氏まで日銀プロパーの総裁が3人続いた。この間にデフレ脱却を果たせなかった責任は重いが、金融緩和で手を抜いたわけではない。必死に緩和策を模索し続けたものの「一線を越える」のをためらったことが裏目に出た」「その一線とは「通貨価値を意図的に下げる」ということだ。モノに対するお金の価値が相対的に高い状態をデフレと定義すれば、お金の価値を意図的に下げればいい。際限なくお金を出し(無限の量的緩和)、リスクのある資産を買えばいい(質的緩和)わけだ」「しかし、「通貨の番人」を自負する日銀は、「お金の信用は都合よく落とすことなどできず、一気に失墜する」(幹部)と考えた。健全な価値観ながらも、積極緩和に慎重な姿勢は「デフレ克服の努力が甘い」との批判を生んだ」「2%の物価上昇に向け、量的にも質的にも金融緩和を徹底的に追求するスタイルは、プロパーではない黒田総裁だからこそ可能だった。慎重さの吹っ切れた姿勢を市場は好感するが、挑戦の成否が問われるのはこれからだ。ほどよく通貨価値が落ちなければ「悪性のインフレになる」(日銀OB)ことは国民も認識しておくべきだろう」

「一線を越えた実験」「通貨堕落(意図的に通貨価値を下げる)」「悪性のインフレ」などのフレーズをちりばめ、日本銀行の政策転換の「リスクだけ」をとりあげている。そして、白川前総裁による政策運営が健全だったという、思い込みも強く反映されているようだ。さすがにプロの記者だから筆力があるため、一見もっともらしいことが書いているように見える。

ただ、「日本経済がこれまで長きに渡りデフレと経済停滞に苦しみ」それに「金融緩和不足そして早すぎる金融引き締めが決定的に影響していた」、という歴史的な事実を認識すれば、この記事の指摘がいかに的外れであるか容易に理解できるだろう。

今、金融市場で起きている大きな変化が、景気回復をもたらしているのが現実である。そして、リーマンショックから4年以上も経過しており、これまでの日本銀行の判断が日本経済に対して大きなダメージとなったことをどう考えているのか?

インフレとは通貨価値を下げ続けることであり、それをできるのは通貨の番人である中央銀行だけである。だから日本銀行の政策転換が、デフレという問題の解決に直結する。そして、日本銀行がようやく生まれ変わり、アベノミクスは成功の途上にある。しかし、このように、日本にはデフレ継続を望むメディアに潜む識者は今なお存在している。こうした無視できない勢力が、日本経済復活の障害になりうることを、国民は認識しておくべきだろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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