新たなウェブマーケティングの手法として注目されるフェイスブックのファンページ。東洋ゴム工業グループのNITTO(ニットータイヤ)は2月、ファンページの登録ユーザー数が300万人を超えた。実はこの数、タイヤブランドとしては世界一。自動車ブランドで見てみても、ホンダやレクサス、独フォルクスワーゲンを抜いて11位につける。日本のメーカーで言えば、1位のソニーに次ぐ多さだ。

 しかも、ただ単にファンの数が多いだけではない。「いいね!」や「シェア」、コメントをするといったファンによる反応(エンゲージメント)が高いのが特徴で、一般的なエンゲージメント率が2~3%であるのに対し、NITTOは他ブランドを凌駕する10%台を誇る。

 その秘密は、エキサイティングな映像投稿やユニークなコンテストの開催など、ファンが釘付けになるよう常にコンテンツに“仕掛け”をしていることだ。

 そもそも日本でその名はほとんど知られていないNITTOだが、カーレースやカスタマイズカー向けタイヤの専門メーカーで、米国ではコアなファンから支持を受ける。「恐竜の爪」や「炎」などをイメージした個性的なトレッド(タイヤ表面の溝)デザインと、激しいレースに適したタフな性能が人気の理由だ。

 NITTO USAの水谷友重社長は、「こうした商品特性をアピールするには、マスではなく、そのセグメントに深く入り込むことが重要」と説く。その有効な手段が、ターゲットを絞り的確なメッセージを配信できるウェブマーケティングなのだ。

 NITTOは2007年頃から、従来の雑誌広告からウェブマーケティングへシフトし、自動車業界で初めてフラッシュを搭載したホームページを作成するなど、エンターテイメント性の高いウェブ作りに注力してきた。YoutubeのNITTOチャンネルでは、四輪駆動車で砂漠を駆け抜けるオフロードレースや、2台のクルマが盛大なエンジン音を轟かせ短距離を競うドラッグレースなど全米各地で行われる様々なレースの様子をくまなく伝える。

 フェイスブックでは、フォード・マスタングなどのマッスルカー(ハイパフォーマンスなアメリカ車)や、ポルシェなどの高級スポーツカー、はたまたレース専用バギーカーなどNITTOのタイヤを履いたあらゆるジャンルのクルマの写真をこまめにアップ。各ジャンルの愛好者から「it’s cool」「I love it」といったエンゲージメントが募る。前述のYoutubeチャンネルへリンクした投稿も頻繁に行う。