高級物件を買い漁る富裕層
追随する金融マンと外国人

 高級ブランドのフラッグシップショップが立ち並び、都心の一等地として名高い表参道駅界隈。メインストリートから少し奥まった場所にある三菱地所レジデンスのモデルルームには年明け早々、フェラーリやマセラッティ、ランボルギーニなどの高級外車がひっきりなしに出入りし、スタッフが接客に追われていた。

 販売しているのは、同社の「ザ・パークハウス 西麻布レジデンス」。敷地面積3000平方メートルのタワーマンションで1億円を超える部屋も数多い高級物件だ。菊地伸一所長は「昨年は売れにくかった価格帯の部屋も売れるようになり、購入者の検討時間もかなり短くなってきた」と話す。

 昨年、既にマンション市況は底打ち感があったものの、買いたいと思わせるだけの大きな要因もなく、迷う客が多かったという。それが、年末に状況は一変。衆議院選挙で自民党が圧勝し、アベノミクスが始動したことで、マンション市況に火が付いた。

 市況を好転させている最大の要因はインフレ。長らく低迷を続けてきた不動産価格が上昇するのではないかとの観測だ。既に株価は急上昇。これがいずれ、不動産にまで波及するのではないかとの見方が強まっている。

 そうなれば、マンション価格は上がるし、購入した物件の資産価値も上がるだろうから、その前に買っておこうという思惑が働く。

 また、超低金利も後押しする。日本の金利は長らく低水準のまま推移してきた。黒田東彦・日本銀行総裁が就任早々打ち出した大胆な量的緩和策によって、住宅ローン金利はむしろ低下傾向を強めるだろう。だが、将来的に物価が上がれば長期金利も上昇に転じる可能性が高く、歴史的な低金利を享受するチャンスは今しかないとのムードが高まっている。

 さらに給料の引き上げもマンション価格の先高感に影響する。アベノミクスが成功したとしても、賃上げが波及するのはしばらく先になりそうだが、実現すれば購買力が増し、ひいてはマンション価格の上昇につながる。

 こうした構図を思い描き、「今が買い時」とばかりにモデルルームに走ったのは、富裕層だけではない。銀行や保険、証券など、いわゆる金融マンたちも年明けからなだれ込んだ。