葡萄がダメなら林檎がある
名産のシードルとカルヴァドス

 ここまで、印象派のルートを辿ったところで、みなさんのスケッチブックを開けてみてください。

 そこには、ジヴェルニーのモネの庭からエトルタの断崖まで、印象派が辿ったルートと同じ絵が残されているはずです。ノルマンディー地方の町並みを歩いていると、木骨組みの建物が多いことに気づきます。

 これは、前回アルザス地方の回でご紹介した建築様式とほぼ一緒です。それぞれのフランスの地方では、各土地で産出される材料を使った建築様式が発達したと言われており、このノルマンディー地方は、石や木が多く採れるため、石の土台に木組みの家を建築する「コロンバージュ(Colombages)」と言われる様式が取り入れられています。

印象派画家の名画と歩くノルマンディー地方<br />日本人の手による「林檎の礼拝堂」も必見林檎のお酒、シードル(左)とカルヴァドス
©Atout France/CDT Calvados

 また、フランスはワインの産地と言われますが、ここノルマンディー地方は例外で、気候や土壌が葡萄の生育にそぐわないため、ワインは生産されていません。その代わり、この地に最適な林檎が生産され、日本でも知られている林檎のお酒・シードルや、カルヴァドス(林檎のブランデー)が名産になっています。

 かの有名な作家アーネスト・ヘミングウェイもことのほかカルヴァドスがお気に入りだったようで、「武器よさらば」でも、主人公のカップルが夜を徹してカルヴァドスを飲むシーンが描かれているようです。強いお酒があまり得意ではない私は、アルコール3%のシードルとともに、そば粉でできたガレットやクレープを食べる[ノルマンディースタイル]が好きです。