ネット訴求は福祉と個人向け

 木村さんの場合、自らが開発した業態なので、既にパーソナルブランディングの条件を満たしていたようなものでした。それをインターネットで情報配信することにより、検索にかかるようにしながら、その強みを伝えていきました。その結果、評判はどんどん高まりました。さらにそれをやっているのが木村さんだとわかると、車関係の業界の知人から声が掛かるようになりました。「頼みに行かなくても向こうから求めてくる」関係が現実になったのです。

 以前勤務していたメーカー系の大手ディーラーとも洗剤と用具の販売契約が成立しました。その時木村さんが出した条件は、「すぐに成果を求めず長く取り扱ってほしい」というものでした。一方でカー用品チェーンとの契約は断りました。大量取引だからと価格に条件が出されたからです。パッと火がついて売れるものではなく、消費者が困った時に助けとなるものだという商品の性格を知悉していればこその判断でした。その結果、短期的な収益ではなく、貢献の精神を貫くことにより、長期的にお付き合いできるお客様との信頼関係を築くことができたということです。

 木村さんは巧まずして事業に3つの側面を与えることに成功しました。自家用車利用の個人客、事業用車両や建物を持つ事業者、フランチャイズ化。このなかで個人客は利益効率としては高くないかもしれませんが、木村さんにとっては一番大切な部分です。

「インターネットではあくまでも福祉と個人顧客をターゲットにしています。起業のきっかけになったのは介護業界への貢献でしたから、車内の汚れやにおいの悩みを解決するためにお役にたちたい。これこそが私のパーソナルブランドです」。

 これからフランチャイズのメンバーになる全国の同業者のためにも、インターネットによるこのブランドの確立が必要だと、木村さんは考えています。同時に個人のニーズ、福祉のニーズに応える現場とつながっていることの大切さも見失ってはいません。お客様が気軽に車を運んで来られるように、遠からず今より広いスペースの路面店を開くのが次のステップと、木村さんは考えています。

新しくニッチな業態で活きる
パーソナルブランド

 今までになかった新しい業態で、パーソナルブランドを確立することに成功した木村さんのポイントを次の3点にまとめてみました。

1.自分の強みを「車のシート洗浄」に置き、安心と信頼を意識しながらインターネットでの情報発信を行い、わかりやすくアウトプットしていったこと

2.主たる情報発信を信頼性の高いサイトから発信したこと

3.短期的な収益ではなく、「お客様や業界へ貢献をする」というスタイルを貫き、長期的な視点をもって取り組んだこと

 インターネットは、効果的に使うことによって、さまざまな属性の潜在顧客に情報を直接配信し、「最も受け入れられやすい」方法でアプローチをすることが可能になります。もちろん、複数のインターネットメディアを運営するのは手間がかかり大変だと思いますが、これを行うことによって今までアプローチが出来なかった潜在顧客が増えるのであれば営業する時間をこのアウトプットに使うことは決して無駄にはなりません。長期的な視点をもって、取り組んでみてください。

 次回は、いよいよ最終回です。パーソナルブランドを構築する3つのステップの最後「貢献」についてお話します。


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