土地代には消費税がかからない!
消費税を過大に見積もっているかも?

 また、「消費税アップで不動産価格の3%、5%に相当する額だけ負担が増える」と思い込んでいる方は、実はマイホーム取得にかかる消費税を過大に見積もっているかもしれません。

 一般には不動産を購入する機会というのはめったにないものなのでご存じない方も多いのですが、不動産価格のうち、消費税が課税されるのは建物部分のみです。土地代には、消費税はかかりません。

 うっかり、消費税額を「2013年までは4000万円×5%=200万、2014年からは4000万円×8%=320万円だから、120万円も負担が増える」と計算していたとしたら、それは間違いです。

 たとえば税抜き価格4000万円のマンションを購入するケースで、土地代が4割、建物代が6割とすると、消費税の課税対象になるのは2400万円。2013年までは「2400万円×5%=120万円」だったものが、2014年からは「2400万円×8%=192万円」になるわけで、負担増は72万円ということになります。

 また、これも意外に知られていないのですが、不動産会社を仲介として個人の売り主から中古住宅を購入する場合、消費税はかかりません。マイホームを売却する方が会社員など一般の方人なら、消費税の課税業者ではありませんから、消費税は課税されないのです。もし中古物件購入を視野に物件を探すなら、消費税増税による負担増は、不動産会社へ支払う仲介手数料にかかる消費税の分くらいです。

 もちろん、マイホーム購入時は引っ越し代や家具購入費、登記にかかる手数料など諸費用にも消費税がかかりますから、消費税率アップによる影響はもう少し多めに見積もる必要があります。しかし、不動産取得についていえば、消費税増税の影響は「思ったより少なそうだ」と感じる方が多いのではないでしょうか。

消費税だけが原因で
買い急ぐとあとで後悔する!

 このように、住宅ローン減税拡充と消費税増税の両方について実際の影響を考えてみると、「消費税増税の前と後ではどちらが買い時なのか」と迷ってしまうでしょう。実のところ、住宅ローン減税で消費税増税分の負担をカバーできるケースもあれば、カバーし切れないケースもありますから、「こっちのほうがお得だ」と言い切ることはできません。

「そのうちマイホームを買いたい」と考えている人にとって、消費税増税は「これをきっかけに思い切って買ってしまおう」と背中を押す要因になるでしょう。しかし、「増税になるから」と住宅を買い急いでしまうのは大変危険です。

 というのも、本来、家を買うタイミングは税制などの外的要因ではなく、「頭金や諸費用に充てられるお金が十分に貯まった」「家族構成が固まった」などの内的要因で決定すべきものだからです。

 私はいつも、頭金と諸費用を少なくとも物件価格の2~3割は貯め、さらに「万が一の時のためのお金」を200万円程度は手元に残したうえで住宅購入に踏み切るようアドバイスしています。近年は銀行間の住宅ローン獲得競争が激化しており、その結果として頭金ゼロでローンを組むこともできるようになっていますが、「借りられること」と「返せること」は別の話。頭金ゼロで借入額がふくらめば、その分だけ利息負担が増えて返済期間が長引き、将来、返し切れなくなるかもしれません。

 そもそも、「消費税増税前のほうがお得だろう」と住宅購入を急いでも、十分な頭金もないままに住宅ローンを組めば、利息負担が増すことで長期的にはマイナスになることも考えられますから、本末転倒なのです。