「幸せでした」 

 旅立ちを迎えようとしている方との間で、「楽しかった」「本当にありがとう」「出会えてよかった」などの言葉が使われますが、私はお別れの作法としては「幸せでした」という言葉の使用もお勧めしたいと思います。

 現代人は、この言葉をどこか恥ずかしがって積極的に使いたがらない傾向がありますが、言葉は使わなければ生きません。できれば、生きているうちに相手に「幸せだったよ」と伝えてあげてください。

 そしてこの言葉ほど、伝えた相手の生きる活力を増大させる言葉もないでしょう。たったひと言で、それまでの関係、その空間の雰囲気を変えることさえできる言葉です。

 100人いれば、100通りの人生があります。似て非なるものが私たちの人生であり、人生はどこかの何かと、あるいは誰かと比較して価値が決まるものではありません。
 人生は競争ではなく、共生です。
 古来、幸せも不幸せもその人の気分一つ、要は気の持ちようで決まると言われました。何も持たずとも、幸せは自分で得ることができるのです。私たちを取り巻く森羅万象、そして大いなる存在に自分が生かされている喜びを知ることで自然と幸せになれるのです。

 幸せは「仕合わせ(し合わせ)」とも書きますが、そもそもこの言葉が幸せの語源だと言われており、それは「めぐり合わせ」「運」の意味があります。
 手と手を合わせて「合わせ=幸せ」とも言われるように、幸せは合掌からも生まれます。合掌(祈り)の重要性はすでに書きましたが、祈ることでよい運気が舞い込んでくるのです。

 幸せとは、自分の生きがい、あるいはやりがいに出会った瞬間です。
 幸せでした、という言葉には「好きな人生を歩くことができた」「ささやかながらも好きな人とめぐり合い、過ごすことができた」などといった感謝の気持ちが込められているのです。


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