エレクトロニクス事業の不振が続く中、2012年度は5期ぶりの最終黒字の達成を見込むソニー。営業損益、最終損益共に巨額赤字を計上した11年度からの“V字回復”のようにも見えるが、内実は資産売却による利益のかさ上げがほとんどだ。本業が苦しい状況は変わっていない。
ソニーの本業は、不動産である。
これは皮肉でも何でもない。他ならぬソニー自身が、そう宣言しているようなものだからだ。
米国ニューヨークのマンハッタンにそびえ立つ36階建ての本社ビルは11億ドル(1048億円)。JR大崎駅前で築わずか2年の25階建てのソニーシティ大崎ビルは1111億円──。
今年2月から3月にかけ、ソニーは相次いで自社ビルを売却した。そして、決算資料にはこう記載されている。
「(ビルの)売却益は営業利益に計上する」
不動産の売却は、テレビやゲーム、デジタルカメラなどの“本業”の収益と同様に、営業利益に含まれているのだ。単にキャッシュを確保するだけではなく、営業利益のかさ上げに大きく寄与しているのである。
2011年度に673億円の営業赤字と、過去最悪となる4566億円の最終赤字を計上したソニー。5期ぶりの最終損益の黒字化は“必達目標”として社内に重くのしかかっていた。
何が何でも黒字化を達成させる。そんな意気込みとは裏腹に、看板のテレビやゲーム機などの売れ行きは低空飛行を続ける。年間販売台数計画は、液晶テレビが1750万台から1350万台へ、携帯型ゲーム機が1600万台から700万台へと下方修正を繰り返し、エレクトロニクスの主力製品は軒並み総崩れの状態だ。
2月7日発表の第3四半期決算で明らかになったエレクトロニクス事業全体の12年4~12月期の営業赤字は354億円。通期の赤字幅は年末商戦後の在庫調整などの影響で、さらに拡大する見込みだ。
一方、ソニーはこの第3四半期決算時、通期の業績予想は据え置いた。営業利益1300億円、最終黒字200億円の見通しは死守したのだ。その理由を加藤優CFOは「資産売却を織り込んでいる」と説明。売れるものは何でも売るという、なりふり構わぬ資産の“大放出”が始まった。