ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
2030年のビジネスモデル

100年の時間軸を持った金融とは?――鎌倉投信が育む「希望の金融」

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第5回】 2013年4月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
2
nextpage

普通の金融商品は全て数値で表現され、
その内容を目で、耳で、肌で感じとることができない

 投資信託「結い 2101(ゆいにいいちぜろいち)」を設計するにあたり、鎌倉投信は「公募型」、「投資信託」、「直接販売」という3つのポイントにこだわった。不特定多数が少額から参加できる「公募型」にしたのは、多くの人が小口からでも参加できる枠組みを作りたかったからだ。さらには、購入者の数がだんだんと増えて、そうした受益者が投資先の「いい会社」を知ることによって「結い 2101」の社会的な影響力やメッセージ性を高めることができると考えたためだ。単に資金量の大きさだけではなく、何万人という受益者の数が示す「投票」にも似た社会的意味合いを大事にした。

 また「投資信託」にしたのは、投信には満期をなくすことができるため長期的な投資、極端に言えば無期限の投資が可能であるためだ。「100年続く投資信託で、300年社会に貢献する『いい会社』を応援したい」と鎌田さんは言う。また投信であれば成熟した企業と将来花開く若い企業とを組み合わせて事業サイクルを分散し、トータルなリスクを緩和することができることも理由だ。現在、限られたリスクの中で非上場の企業に数社投資を行っている。

 こうした、若い企業への投資といえば、通常ベンチャーキャピタルが真っ先に思い浮かぶが、その投資期間は約7年程度である。若い価値ある企業の中にはもう少し長い目で応援したほうが成功確率を高められるケースも多く、投信の持つ無期限性を上手く使えばそれが可能になる。

 3つめにこだわったのは「直接販売」。銀行や証券会社を介さず、直に投資家の人たちへ鎌倉投信の考え方や想いを伝えながら販売していくためだ。一般に金融商品というのは全て数値で表現されることが多く、自分がいったい何に投資しているかわからなくなっている人が多い。

 投資の経済的な結果だけに関心が集中していて、投資の中身については関心が薄くなってしまい、極端な話、儲かれば中身などどうでもいいという人もいる。鎌倉投信は投資家と投資先の会社とが信頼で結ばれる「顔の見える関係性」を意図的に構築していった。投資の「手触り感」を大事にし、投信を通じた自分の投資先を目で、耳で、肌で感じとる機会をできるだけ作っていくようにした。

 たとえば、受益者による投資先への会社訪問を定期的に開催し、そこで経営者の人柄に触れたり、取り組んでいる事業を深く知ったりすることができるようにした。昨年で第3回目となる「結い 2101」の受益者総会は鎌倉の建長寺で開かれた。当時約3500人いた受益者(投資信託購入顧客)のうち15%程度が全国から集まり、投資先であるツムラ、トビムシなどの経営者の話に聞き入った。

previous page
2
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

「2030年のビジネスモデル」

⇒バックナンバー一覧