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2030年のビジネスモデル

100年の時間軸を持った金融とは?――鎌倉投信が育む「希望の金融」

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第5回】 2013年4月25日
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 では、鎌倉投信の「結い 2101」は、一般的な社会貢献ファンド(SRIファンド)とは一体どこが違うだろうか。鎌田さんによると、SRIファンドは一般的に形式的、総花的、網羅的であり、その投資先は大企業が中心になっているという。

 「オール5じゃなくていい。CSRレポートで美しく飾るような企業に興味はない。社員をリストラして浮いたお金で森林保全をしても意味がない。規模は小さくても実質的で永続的な、本業において社会的課題を解決する企業を選んで投資していく」とその投資哲学を語る。運用者が魂を込めて投資しているかどうかも一般的なSRIとの違いといえそうだ。

 こうした鎌倉投信の投資哲学・投資方針に、会社組織に依存せずに自分の足で立つ問題意識を持ちSNS等を通じて自ら情報発信も行う30代、40代の個人投資家がまず動いた。鎌倉投信では3800名の受益者のうち30代、40代が60%を超えており、これは一般的な投資信託保有者像に比べてかなり若い。まさに次世代を象徴する投資信託である。現在「結い 2101」の運用金額は約35億円、投資先企業数は41社(2013年3月末現在)にまで拡大中である。

良い運用パフォーマンスは、運用者だけでは作れない

 「結い 2101」の運用成績はどうであろうか。2010年3月~2013年3月までの3年間、「結い 2101」の年換算リターンは9.1%であり、同期間におけるTOPIXの年換算リターン2.3%と比較して極めて高い。一般には「社会性と利益性が同一方向で成りたつのか」という疑問が持たれることが多いが、「いい会社は利益を出し、資産形成になることを証明したい」と鎌田さんは考えている。

 鎌倉投信では、リスクを年率10%以内に、リターンを年率4%(信託報酬控除後)程度にすることを目標に運用しており、販売手数料はゼロ、信託報酬はアクティブファンドとして投資家にお願いできるぎりぎりの水準である1.05%にとどめている。「結い 2101」の好成績を支えているのは、思想が良いからだけではなく、裏に外資系運用会社で培った鎌倉投信のプロの技術があるからだ。「プロのプロたる所以は、どんな環境下でもマイナス幅をいかに小さく抑えられるか、マイナスの期間をいかに短くするかです。市場が大きく値下がりした時はむしろ普段より多めに購入するようにしています」

 ただし「良い運用パフォーマンスは、運用者だけではつくれない」と鎌田さんは言う。「値下がりした時に不安にならず、逆にファンドを購入してくれる顧客がいることで、ポートフォリオがキレイになります。良質な顧客は運用パフォーマンスを底上げします」

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

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未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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