株式レポート
4月24日 18時0分
マネックス証券

間の悪い話 - 広木隆「ストラテジーレポート」

<バブルの頃に、ラサール(石井)が銀座の姉ちゃんに入れ込んじゃって、何百万もつぎ込んだ。それでもやらせてくれなかったのに、バブルが弾けてから二万円のファッションヘルスに行ったら、そのお姉ちゃんが出てきた。銀座も不景気になってお姉ちゃんも「都落ち」。で、「ちくしょう三百万円でもやらせなかったのに、二万円なんて……。バブルのばかやろう!」って、間抜けだな。>

ビートたけし著『間抜けの構造』には、こうした間抜けな話がこれでもかって出てくるのだけど、たけしいわく「辞書を引くまでもなく、間抜けというのは『"間"の悪いやつ』のことだ。」そうしたら、僕なんかも典型的な間抜けの部類かもしれない。

話は唐突だが、僕は痛いのが嫌いで、歯医者などこどものころから今まで一度も行ったことがない。だけど、僕よりもっと「痛み」が嫌なひとたちがいる。選挙を控えた政治家だ。痛みを伴う改革は7月に参院選を控えて取り上げにくいということらしい。

政府の産業競争力会議は昨日、雇用制度改革の骨格を決めた。従業員の転職を支援する企業向け助成金の拡充などを柱とする一方で、解雇規制の緩和など痛みを伴う改革は6月に策定する成長戦略には盛り込まない方向になった。

企業経営者ら競争力会議の民間メンバーは「過剰な規制を見直し、諸外国並みにすべきだ」と指摘していた。焦点は、再就職支援金を支払えば解雇できる「事前型の金銭解決ルール」の導入だったが、カネを払えばクビを切れる、というのはいかにも過激と映ったのか、あっさり取り下げになったのだ。

まあ、これについては上旬の衆院予算委員会で安倍首相も甘利大臣も、事前型の金銭ルールには否定的だったから驚きはそれほどないのだが、では民間メンバーもいる産業競争力会議の存在意義はなんなのか。<国会で野党などから批判を浴び、政府内でも「7月に参院選を控えて刺激的な話題は取り上げにくい」(内閣官房)との声が強まり、民間議員も尻すぼみになった>と日経新聞は書いている。これでは白川前総裁から黒田総裁に変わったとたん、意見をころっと変えた日銀の審議委員と同じではないか。

この話のどこが間が悪いかというと、昨日、僕はマネックスラウンジのコラム『投資の潮流』で、女性の活用を成長戦略の柱にするという安倍首相の方針を取り上げて、それは実は企業のリストラを促進し、企業の生産性を高めるのが狙いではないかと書いたのだ。そのために政府の産業競争力会議では解雇規制の緩和が議論されていると述べたばかりだった。それが成長戦略に解雇規制の緩和は盛り込まれないことが昨日決まった。なんとも間の悪い話ではないか。
『投資の潮流』でも書いたけど、経済成長を決める要因は資本と労働という二つの生産要素、及び生産要素当たりの生産性(=全要素生産性)である。長期的には少子高齢化で労働力不足の懸念があるが、今はまだ労働力は供給過剰だろう。だから女性の社会進出を促す狙いはそれによって能力の低い男性社員をはじき出して企業のリストラを促進し、生産性向上を図る意図のほうが大きいのではないか、と思うのだ。女性の活用と解雇規制の緩和はセットメニューで議論するからこそ意味がある。

日本経済新聞社が主催した「春のプレミア経済フォーラム」で講演した竹中平蔵・慶応大学教授のスピーチ要旨が新聞に載っている。産業競争力会議のメンバーでもある竹中氏は「成長戦略に打ち出の小づちはない」と述べている。この点は前回のレポート「アベノミクスのアキレス腱」で僕が主張した通りである。

そのレポートでは、そもそも成長戦略とは規制緩和であり、なにか素晴らしい「大玉」がアドバルーンのように打ち上げられるようなものではない、だから初めから大きな期待はしないほうがいいし、それがパッとしなくとも殊更のようにそれを論って「成長戦略進展せず=アベノミクス失敗」と非難するようなマスコミの論調こそ危険、と述べたのだった。

案の定、この様だ。参院選を控えて、刺激的な議論を避ける。痛みを伴う改革は後回し。これではアベノミクスの成長戦略はこれまでの規制緩和議論と変わり映えしないではないかとの烙印を押されても仕方あるまい。自分で「非難しないことが大切」と言っておきながら、やはり失望を隠せない。思わず批判的になってしまう。これも間が悪いことこのうえない。

これから参院選を控えて、ますます痛みを伴う改革は影をひそめていくだろう。代わりに、女性の活用、待機児童解消、先端医療を成長産業に、などと耳触りのよいキャッチフレーズが全面に出てくるだろう。先に挙げた竹中さんのスピーチはこう結ばれている。

「アベノミクスの3本の矢のうち、1本半は飛んだ。後の矢がどうなるかを注目したい。」まさに同意する。

経済成長を決める要因は資本と労働という二つの生産要素、及び生産要素当たりの生産性(=全要素生産び性)と述べたけど、生産性のなかでもっとも重要なものが技術革新である。ビートたけしは『間抜けの構造』のなかでこう述べている。

<"間"というものを大切にするのは日本の長所でもあるけれど、その一方で、短所もそこにある。"間"を大事にするということは、つまり過剰に空気を読む文化でもあるわけで、そうするとゼロから何かを生み出す能力がどうしても弱くなる。新しいものを作るには、何かを壊さなきゃいけないんだけど、それが苦手。結果、思い切ったイノベーションができない。>

間を置いてはだめな時がある。今がその時だ。第1の矢が順調に放たれた今、一気呵成に「世間に評価される」成長戦略をまとめ上げるべきだ。参院選を控えて過剰に「空気」を読んでいる場合ではない。まさに間が悪い。いっそビートたけしを産業競争力会議のメンバーにしたらよいのではないかと思う。

バブルがはじけて久しい。冒頭に引用したラサール石井の笑えない話も、さもありなんというところだ。しかし先日、久しぶりに明るいニュースがあった。銀座の大型ディスコでバブル時代に一世を風靡したお立ち台が復活したというのである。むむむ、銀座のディスコでお立ち台…。なんともバブルの香りがしてくるじゃないですか!

安倍さん、お願いだから3本でも5本でも矢をどんどん飛ばして、バブルを復活させてください!また銀座で飲めるようにしていただきたいんですっ!300万円つぎ込むつもりはないけれど。




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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