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政局LIVEアナリティクス 上久保誠人

日本の国益を考えると、中国とは揉めているくらいがちょうど良い

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第5回】 2008年9月2日
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 北京五輪が終了した。日本選手の活躍に手に汗握ったのはもちろんだが、同時によくも悪くも中国の「大国化」を強烈に意識させられた。日本はこの隣国とどう付き合っていくべきなのかを考えさせられた日々であった。今日は、日中関係について思うことを書いてみたい。

「靖国問題」は
日中関係最大の懸案事項か

 小泉政権当時、「靖国問題が日中間の最大の懸案事項」というのが、いわば「通説」となっていた。ここから議論を始めてみたい。もし、この「通説」が正しいなら、日中関係とは、実に「幸せな二国間関係」だと思うからだ。

 世界中には戦争状態や休戦状態の二国間関係が少なくなく、これらでは日常的に人が死ぬ緊張感がある。一方、「靖国問題」のために誰も死ぬことはない。誰も経済的に困窮することもない。「靖国問題が最大の懸案事項」というのは、日中間には大きな問題がないと言っているに等しいのだ。

小泉政権で日中関係は
むしろ進展した

 実際、小泉政権時には、日中関係は「靖国問題」の裏で様々な進展があった。例えば、経済関係では、日中貿易総額が日米のそれを上回った。日中間の人的交流も拡大し続け、2005年には約417万人に達した。中国における在留邦人数も10万人を突破し、日本に居住する中国籍の外国人登録者数も50万人を超えた。

 もちろん、日中間には東シナ海の資源開発問題など様々な懸案事項があったが、定期的な事務レベル協議はきちんと継続された。議員外交や、民間人の交流も途切れることなく活発に行われていた。

 小泉首相の靖国神社参拝のたびに、中国政府側は過剰に反応し、首脳会談を一方的に拒絶した。これに対して小泉首相は動じることなく淡々としていた。しかし中国は、日本経済が中国への輸出に大きく依存しているにもかかわらず、日本を経済制裁するような実効性ある措置を取れなかった。つまり、「靖国問題」を巡っては、実は日本より中国の方が弱い立場にあったと言える。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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「大物政治家に話を聞いた」「消息通に話を聞いた」といった大手マスコミ政治部の取材手法とは異なり、一般に公開された情報のみを用いて、気鋭の研究者が国内・国際政局を分析する。

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