親しい人が亡くなった。71歳だった。本人は、ガンモドキと言っていたが、肝臓癌だったのだろう。

 手術もせず、抗がん剤も飲まず、癌で死ぬのが一番いいとうそぶきながら、悠々と逝ってしまった。

 私が、銀行で大きなトラブルに巻き込まれた時も、退職した時も、作家になって順調な時も、逆境の時も、いつも変わらず励まし、支えてくれた。

 定期的に食事をし、銀座で飲ませてもらい、いろいろな話を聞かせてもらった。

 亡くなる2週間前にも一緒に食事をした。痩せて腹水が溜まり、苦しそうだったが、ほんの少しビールを飲み、肴を口にすると、目が輝き、話に熱が入った。6月にまた会おうと日程を決めたが、もたないだろうなという予感があった。タクシー乗り場まで歩こうとされたので、心配になって見送った。タクシーに乗りこまれ、軽く右手をあげられた。それが最後だった。

 告別式に参列し、笑顔の写真を見たら、号泣してしまった。せめてもう何年か生きてほしかった。本当にありがとうございました。

今を大切に生きる

 人は死ぬ。死ぬとは別れだ。もうこの世では二度と会えない。残された者は、どうすればいいのか。