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アマデウスたち

李相日
映画以外に行くところはない

週刊ダイヤモンド編集部
【第12回】 2008年1月18日
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李相日
写真 加藤昌人

 昨年9月に劇場公開された「フラガール」は、日本アカデミー賞をはじめとするあまたの映画賞で、作品賞、監督賞など最優秀賞を総なめにした。

 独立系配給会社の作品ながら、10億円を超える大ヒットを記録、興行的にも成功した。メガホンを取っただけでなく、自ら脚本も手がけた。

 優しい映画である。

 1965年、閉山に向かう福島の炭鉱町の復興に“ハワイ”を移植しようという奇策。誇り高き過去にすがってきた炭坑夫、選炭婦の絶望を、フラダンスに打ち込み始めた娘たちのひたむきさが癒やしていく。

 「誰かのことを思って、誰かのためになにかをしたいと考えるキャラクターの表情を映し出すのが映画」との言葉どおり、フラダンスに託された一人ひとりの人生の時々を、繊細に描き切った。

 決して映画少年ではなかった。

 大学を卒業すると、「就職するくらいなら」と逃げるように映画学校に飛び込んだ。だが、卒業制作ですでにその類いまれなる才能を見せつける。

 名実共に日本を代表する若手監督となった今でも「撮影現場に向かうのが怖い」という神経質で不器用な真摯さ。

 重たい口を開けば、選び抜かれた言葉がポツリポツリとこぼれる。石のようにどっしりと腰を据えた強い自我がのぞく一瞬だ。

 「今の自分にとって、映画を撮るということは、食事をしたり、眠ったりするのと同じような、本能的なもの。ここ以外に行くところはない」。

 天職とはこういうものだ。

(ジャーナリスト 田原寛)

李 相日(Lee Sang-Il)●映画監督 1974年生まれ。大学卒業後、日本映画学校に入学。卒業制作作品「青~Chong~」でぴあフィルムフェスティバルのグランプリを含む四部門を独占受賞。「69 sixty nine」(2004年)、「スクラップ・ヘブン」(2005年)、「フラガール」(2006年)の監督を務める。2006年度芸術選奨新人賞受賞。日本映画界で最も注目される若手監督。

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