イノベーションは目的意識の下での
試行錯誤の中から生まれる

紺野 アメリカでも勢いのある企業というのは、今おっしゃったような社会性を兼ね備えています。それを象徴するツールにもなっているのが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でしょう。つまり、社内だけではなく、社外とのパートナーシップというのも、非常に重要な要素になってきていると感じます。

野中 おっしゃる通りだと思います。

紺野 ただし、人と人、あるいは組織と組織は放っておけばつながれる、というものでもありません。所属や利害の異なる社外の人々と組織がなにを接点にしてつながっていけば、イノベーションが起こるのか。その“接着剤”ともなるキーワードが「目的」だと思ったのです。

野中 イノベーションというのは、自分の目的意識がまずあって、それをどう実現していくかという試行錯誤の中から生まれる。まさに「思い」を「言葉」に、「言葉」を「かたち」にというプロセスですから、その通りだと思います。

 今回、紺野さんが提唱された目的工学は、科学的なものと人間的な主観のバランスをとりながら経営していくにはどうしたらいいか、という具体的な方法論にも踏み込んでいます。そういう意味で、哲学的でもありますが、同時に実践的でもあると感じましたね。

(後編は5月17日公開予定です。)


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紺野 登(Noboru Konno)
多摩大学大学院教授、ならびにKIRO(知識イノベーション研究所)代表。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。その他大手設計事務所のアドバイザーなどをつとめる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(経営情報学)。組織や社会の知識生態学(ナレッジエコロジー)をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、研究所などのワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。
著書に『ビジネスのためのデザイン思考』(東洋経済新報社)、『知識デザイン企業』(日本経済新聞出版社)など、また野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)との共著に『知力経営』(日本経済新聞社、フィナンシャルタイムズ+ブーズアレンハミルトン グローバルビジネスブック、ベストビジネスブック大賞)、『知識創造の方法論』『知識創造経営のプリンシプル』(東洋経済新報社)、『知識経営のすすめ』(ちくま新書)、『美徳の経営』(NTT出版)がある。

目的工学研究所(Purpose Engineering Laboratory)
経営やビジネスにおける「目的」の再発見、「目的に基づく経営」(management on purpose)、「目的(群)の経営」(management of purposes)について、オープンに考えるバーチャルな非営利研究機関。
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