私が「債券投資っていいかも」と初めて感じたのは、米ドル建てゼロクーポン債との出会いでした。債券にはあらかじめ決まった時期に利金(利息)が支払われる利付債券と、利金支払いがなく、その分購入価格が低い割引債券があります。ゼロクーポン債はクーポン(利金)がゼロ、つまり割引債券の一種です。私が「米ドル建てゼロクーポン債」の存在を知ったのは1983年の年末のことでした。

年利13%!
元本19万2000円が1万ドルに?!

 このときの米国10年国債利回りは年11%台の複利利回りです。そして私を虜にしたのは20年後に償還を迎える米ドル建てゼロクーポン債でした。20年後の1万ドルがなんと800ドルで手に入るのです。当時1ドル=240円程度でしたから、800ドルは円換算で19万2000円(=800ドル×240円)。

 もちろん当時はその後1ドル=80円の円高になるなんて想定していませんでしたから、当時の為替水準ではじいた将来の240万円(=1万ドル×240円)が20万円程度の資金で確保できたとわくわくしたものです。アメリカが20年後存在すればただ持っているだけで投資元本が約12倍になるわけです。この20年後に償還を迎える債券の利回りは、なんと年13%複利利回りでした。

 この債券と出会って私は思いました。「アメリカ人は何故この米ドル建ての債券を買わないのか」と不思議に思いました。株式投資は確かに大きな利益を得る機会を提供してくれますが、長く持っていれば必ず利益が出るわけではなく、損して終わることもあるじゃないですか。

 しかし、この債券は無事20年後償還を迎えることができれば、持っているだけで投資元本の12倍が約束されているわけです。20年間、年13%複利利回りということは、20年間継続して年13%ずつ勝ち続けることを意味するはず。

 特にアメリカ人にとっては自国通貨建てで為替リスクもありません。アメリカ人はこの国債以外の方法で、確実に20年間という長期にわたり年13%以上のプラス成績を上げる自信があるのかと、当時の私は本当に不思議に思ったものです。それぐらい、この債券の存在、利回りの高さに驚きました。