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「すべてのユーザーやファンを巻き込み、社会と企業をつなぐ」(楽天・黒坂三重)――古川享が聞き出す 今を駆けるスマート・ウーマンの本音

林 正愛 [アマプロ株式会社社長]
【第11回】 2013年5月16日
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古川:黒坂さんがマクロメディアにいたときによく覚えているのが、ユーザー会を運営していたことです。

 デザイナーで自分たちの製品を使ってくれている人たちになんとかビジネスチャンスをつくってあげようとか、イラストレーションがうまい人、文章を書く人、編集をする人もいるから、そういう人たちのビジネス連携をユーザー会で実現していくという姿を初めて実現したのが、黒坂さんだと思います。

 だから私はマイクロソフトにいながらもある意味で嫉妬を感じていましたね。アップルもそういうところがうまかったけれど、アップルとマクロメディアには、使っている人たちの相互の連携と、「どうだ!」という俺様自慢をする卓越するプロフェッショナルと、「へー」と憧れをもって聞く人がいた。

 アルダスもマクロメディアもそうですが、ユーザーを大事にして、彼らの作品を多くの人に紹介する。それを仕事につなげていく場を作ってきたのが黒坂さんでした。

黒坂:常にユーザーやファンの心理を考え、その期待に応えたいと様々な工夫をし、必死でした。

古川:その後マクロメディアを辞めて、ワイノットを始めたタイミングというのは何だったのでしょう。

黒坂:実はマクロメディアを辞めたときに、アップルにいた原田さんが「アップルにおいで」と誘ってくださったのです。それで、他の人と同じように面接を受けたのですが、全くだめで、結局落ちました。

 アップルとマクロメディアは似ているようでそれぞれ独自な体質があって、私自身はマクロメディアンで、すでにアップルの仕事はできないような体質になってしまっていたんですね。それでぶらぶらしていました。

黒坂:マクロメディアを辞めた後も、FlashやDirectorなどのクリエイターの方々が集まるユーザー会には参加していて、ある時フラッシャー(Flashをよく使う人)であるアニメーターの人から日本に上陸しようとしている企業があり、手伝ってあげてくれないかと言われたのです。それがワイノットでした。

 それ以前にも、新しい会社の立ち上げを手伝ってくれないか、というような話はいろいろありましたが、どれもピンとこなくて。今までの私の立ち位置は、メーカーやユーザーに対してソフトを提供する側にありましたが、ワイノットはマクロメディアの大口ユーザーで、ツールを使ってサービスを提供する側。これまでやってきたことと遠からず近からずで、立ち位置がユーザーサイドに変わるのが面白いかなとチャレンジしてみることにしました。

古川:アルダスもマクロメディアも後にアドビの傘下になっているのが面白いですね。

 黒坂さんがやってこられたことは、アルダスのPageMakerでDTP文化を創り、マクロメディアでFlashの文化を創り、次にインターネット上でのコンテンツ・パブリッシングを考えたときに、単に静止画が動いて紙芝居になるというのではなくて、そこに人と人の関係というストーリーが生まれてくる。それを媒介するのがグリーティングカードのようなメディア。

そのためのツールを提供しながら、それがプラットフォームとなって、クリエイターやデザイナーがつながるオーガニゼイション(経緯)を育成する。今でこそこうしたことの重要性はみんな気づいていますが、黒坂さんは90年代の早くから率先して取り組まれた稀有な存在でしたね。

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林 正愛
[アマプロ株式会社社長]

りん・じょんえ/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社、日本経済新聞社にて、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。2児の母。

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