橘玲の日々刻々 2013年5月14日

大惨事が"目に見えない"二次災害を生み出す
[橘玲の日々刻々]

 アメリカ3大市民マラソンのひとつボストンマラソンで爆発事件が起き、沿道で父親を応援していた8歳の男の子を含む3人が死亡し、140人以上がケガをしました。中国では上海を中心に鳥インフルエンザの拡大が止まらず、すでに16人が死亡し、ヒトからヒトへの感染も疑われています。

 私たちは無意識のうちに、今日と同じ平穏な日々がこれからも続くと思っています。だからこそ、その“常識”を覆すような特別な出来事にとても敏感です。

 これは、ヒトが長い進化の過程で生き延びるための必須の能力でした。しかしその結果、私たちはある特定のリスクだけを過大に評価するようになりました。

 もちろん、爆弾テロや鳥インフルを些細な出来事だといっているわけではありません。しかし、マスメディアがテロや感染症の恐怖をあまりにも言い立てると、深刻な二次災害を引き起こすことが知られています。

 2001年の9.11同時多発テロは、イスラム過激派のテロリストが4機の旅客機をハイジャックし、ニューヨークの世界貿易センタービルとワシントンDCの国防総省(ペンタゴン)に激突させ、およそ3000人の死者を出した大惨事でした。

 旅客機の衝突で高層ビルが崩壊するという衝撃的な映像を繰り返し見せられたアメリカ人は、「飛行機は危険だ」と不安に感じ、長距離の移動にも“より安全な”車を使うようになりました。しかし現実には、車は飛行機よりもはるかに危険だったのです。

 アメリカでは、交通事故の死者は年間で6000人に1人です。それに比べて飛行機はきわめて安全な乗り物で、事故による死者は全世界で年間500~1000人です。これを確率に直すと、毎日飛行機に乗ったとして、事故に遭うのはおよそ500年に1回になります。

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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