1+1=10,000がインターネットの醍醐味

なぜ得意分野を任せあう必要があるのか?<br />――コミュニケーションを円滑にするために<br />【nanapi代表 古川健介<br />×ビズリーチ代表 南壮一郎】(前編)南壮一郎(みなみ・そういちろう)
1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。2007年、株式会社ビズリーチを設立。エグゼクティブ向けの転職市場に特化した、日本初の個人課金型転職サイト「ビズリーチ」を運営。2010年、プレミアム・アウトレットをイメージしたECサイト「LUXA(ルクサ)」を開始。2012年、ビズリーチのアジア版「RegionUP(リージョンアップ)」をオープン、2013年2月、IT・Webスペシャリストのための仕事探しサイト「codebreak;(コードブレイク)」ベータ版をオープン。

 古川さんがWebサービスをつくり始めたのはいつですか。

古川 16歳ぐらいのときに、インターネットに触れて感動したんです。親が家にネット回線を引いてくれたのですが、雑誌とかテレビに出てこない、いろいろな情報がたくさんあることに驚きました。

 また、学生時代からの友人で、現在はnanapiのCTOを務めている和田がバンドをやっていて、そのバンドの曲をホームページ上でアップしてみたら、全然知らない人が感想を書いてくれたことがありました。高校生にとってはものすごい体験で、それがWebサービスづくりにハマったきっかけですね。

 面白い経験を仲間と一緒に分かちあうのは大切ですね。ちなみに、nanapiのようなサービスをつくろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

古川僕は、大きなエネルギーが生まれそうな「場」を面白いと感じるタイプなんです。そう思うようになったきっかけは、19歳のときに大学受験の情報サイトの掲示板をつくって流行らせたことです。当時は2000年で、受験情報がインターネット上にほとんどなかった。そこで、互いに情報交換する場をつくってみたのですが、ものすごく盛り上がり、およそ1年後には1日5,000件もの投稿が集まるサービスになりました。閲覧者数も相当多く、予備校業界にとっても、無名の先生が人気講師になるなど、影響があるサービスになったんです。そういう、一般の人によるエネルギーが生まれる場をつくるのが面白いです。

1足す1が2じゃなくなるようなものですね。

古川 インターネットだと、それが簡単に1万とかになっちゃうのが面白い(笑)

 nanapiはご友人の和田さんと2人で立ち上げられましたが、どういった経緯だったのですか。

古川 和田にチャットで「そろそろ会社を辞めて会社をやろうよ」って言ったら、「いいよ!」って返ってきて(笑)。それがきっかけです。

 最初に決めたのは、事業内容やビジョンを決めずに始めようということでした。これをやると決めてから起業するパターンと、起業してから事業内容を考えるというパターンがあると思うのですが、前者はダメだと思ったんです。だって、前者でやって失敗したら、事業内容に惹かれて集まった仲間は解散してしまうだけじゃないですか。

 今の事業が出来上がったのは、どういうきっかけだったのですか。

古川 何もやることがない中でスタートして、最初は何か受託して半年から1年、回してみて、次の年も上手くいきそうだったらそれに絞って投資を入れて、社名もそれに替えてやっていこうという大きなイメージがありました。何かの本で見たのですが、起業家は平均で8回ぐらいは失敗するという説があります。8回失敗する前提で考えると、最初の1つを何にするか、を考えることに時間をかけるのは間違っていると。ですから、来た話が面白そうだったら、まずはそれをやってみようと決めていたんです。

 その後、最初に話にあがったのが、創業メンバーかつエンジェル投資家であるメンバーがやりたいと言っていた、ハウツーサイトです。ハウツーサイトは、ユーザーのニーズもありそうだし、最初の一歩の実現可能性も高い、だけど登らないといけない山が果てしなく高いので面白そうだと思いました。結局、想像以上に大変で、僕らは、その山登りを今も続けているというわけです。