米国ヘッジファンドのサード・ポイントがソニーにエンターテイメント部門の分離と上場という大胆な提案をしたことが話題となっています。株価が大きく上昇する中でこうした動きは今後増えてくるでしょうが、今回のサード・ポイントのアクションには2つの重要なインプリケーションが含まれているように思えます。

短期的な利益を求める
サーベラスとの違い

 1つ目のインプリケーションは、サーベラスとのアプローチの違いです。

 このコーナーで何度か批判したように、サーベラスの西武HDに対するやり口は“ハゲタカ・ファンド”そのものです。提案内容も不採算路線の売却などファンドの短期的な利益増加が中心で、本当に投資先の企業の成長を考えているとは見受けられませんし、手法もTOBなどいかにも日本企業を食い物にしようという感じを拭えません。

 それに対してサード・ポイントは、提案内容こそエンターテイメント部門の分離とドラスティックですが、その提案内容を評価する意見も多いように、自らの短期的利益のみならずソニー長期的な成長を考えていると言えます。

 (ちなみに、私個人はエンターテイメント部門の分離という提案に反対です。確かにB/S、P/Lの観点からは合理的かもしれませんが、ネットビジネスの現実からは正当化できないからです。ネットビジネスのレイヤー構造の中でもっとも重要なプラットフォーム・レイヤーでソニーがシェアを拡大することは、ソニーの長期的な利益のために不可欠ですが、エンターテイメント部門なしでそれを実現できる目途が立つまでは売却すべきではないと覆います)

 そして何より、やり方がサーベラスに比べて格段に常識的でありソフトです。ソニー社長と面談してレターを渡し、そのレターの表現も丁寧であり、そこで自らがソニーのパートナーであることも強調しています(『サード・ポイントからのソニーへのレター』)。