株式レポート
5月17日 18時0分
バックナンバー 著者・コラム紹介
マネックス証券

相場を予想するということ - 広木隆「ストラテジーレポート」

実に面白い

5月8日付け日本経済新聞のコラム「春秋」はこういう書き出しで始まる。<SF作家にして生化学者のアイザック・アシモフが言ったそうだ。科学で耳にするもっとも胸躍る言葉、それは「私は発見した!」ではなく「へんだぞ……」である、と。科学の発見にたやすいものなどない。第一歩はつねに「へんだぞ」に始まる、ということだろう。>

月9ドラマ(フジテレビの月曜9時に放映されるテレビドラマ)『ガリレオ』で、僕の永遠のライバル・福山雅治が演じる天才物理学者・湯川学は、事件で奇っ怪な謎に遭遇すると必ずこの決まり文句を口にする - 「実に面白い」。とても科学者らしい台詞である。科学者は、変なこと、奇妙なこと、一見すると説明のつかないこと、そういうものに興味をもつところから真理の探求を始めるものである。

相場に限らず、世の中は不確実性に満ち溢れている。従って、予想というものは当たったり外れたりするものだ。だから単に予想の当たり外れを云々するのではなく、その結論に至るまでの思考の道筋、すなわちロジック(論理)の立て方が重要になってくる。因果関係を捉えることといってもよい。

ところが、その因果関係というやつが厄介だ。投資理論というものは、突き詰めれば不確実性のもとでいかに意思決定を行うかということの研究である。その分野の第一人者であるHEC経営大学院教授のイツァーク・ギルボアは著書『合理的選択』のなかで、マクロ経済学、金融、政治学、社会学等では多くの因果関係がいまだ特定できていないと述べている。『ガリレオ』の湯川先生は「現象には必ず理由がある」というが、それはあくまで物理学とテレビドラマの世界の話で、現実の経済は違うのだ。そこが、「実に面白い」ところでもある。

どこで間違えたのか

昨日(16日)のテレビ東京ニュースモーニングサテライトは、日経平均が1万5000円を突破したことから、この先の相場見通しの特集を放映した。スタジオ解説は僕である。

池谷キャスター: 「ちょうど1カ月前に広木さんにご登場いただいたときは、まだ1万3000円台半ば。その時、広木さんはそろそろ一服するのではないか、とおっしゃっていましたが...お見立てが外れてしまったのはなぜですか?」

広木: 「あの、池谷さんね、これだけはお断りしておきたいんですけど、僕は去年、相場がどん底にあった時から強気を述べていた人間で、この先もまだ上値余地は大きいと思ってるんです。そうした上昇局面のなかで目先は短期的に一服となってもおかしくない、と言ったわけですが...言い訳ですね、はい、外れてしまいました。」

予想というものは当たったり外れたりするものだから単に予想の当たり外れを云々するのではなく、その結論に至るまでの思考の道筋が重要であると述べた。池谷キャスターは、この点をちゃんと理解していて、どうして予想に反して相場が上値追いとなったのか、どこで何を間違えたのかをきちんと分析することが大切ですよね、という。

そりゃそうなんだけど、大勢の視聴者がいるテレビ番組で、自分が間違ったことを自分で解説するというのは、「実に面白くない」ものである。実に面白くはないが、仕方がないので僕は渋々こういう説明をした。
「米国の景気を弱く見過ぎた、というのが間違った要因です。」

前回のレポートでも述べた通り、日本株はグローバル景気敏感株である。そして米国金利はグローバル景気の体温計だ。世界経済が順調に成長すれば米国金利は上昇し、グローバル景気拡大の恩恵で日本企業の利益が伸びる。両者の相関は極めて高い。

米国の景気指標にはここ数年、春から初夏にかけて弱含むという季節性がある。今年も例年のパターン通りに、やはり指標が弱含んでいた。それを受けて、3月には2%にまで上昇していた米国金利が再び低下傾向にあった。しかし、日本株もドル円も強烈に上昇した。それは言うまでもなく4月初旬にあった日銀の「異次元緩和」の効果である。だから「異次元緩和」が市場に織り込まれ、その効果が剥落してくれば(すなわち市場が落ち着いてくれば)、米国景気の弱さ(すなわち米国金利の低下)のほうに引っ張られて、株価上昇のピッチも鈍ると考えたのである。事実、ドル円は100円の大台を前に足踏みを続けていた。


ところが日本のGW中に発表された4月の雇用統計で状況が一変する。弱いと見られていた非農業部門の雇用者数が予想対比上ぶれして、さらに過去2カ月分も上方改定された。これを受けてNYダウ平均は取引時間中に1万5000ドル台をつけ、ほどなくして終値でも1万5000ドル台を突破、史上最高値更新が続いている。こうしたことから日本株もGW明けは大幅高となった。一旦、弾みがついた相場は止められない。日経平均が1万4000円台に乗せてから、次の大台替り、1万5000円まではわずか6営業日だった。結局、米国の長期金利は再び2%を目指して上昇に転じた(グラフ1)。株と為替のほうが正しく、米国債のほうが米国景気を過度に悲観的にとらえていたことになる。そして、僕も米国金利に引きずられたのだった。

米国景気は強いのか

しかし、である。米国景気は本当に強いのか?雇用統計は確かに上ぶれた。しかし、雇用統計はもともとブレの大きな統計である。その他の統計を見てみると、小売売上高が良かったぐらいで企業の景況感などは軒並み悪化している(表1)。



端的に言って、経済指標にあらわれている米国景気は強くない。それにもかかわらず、株が上がっているのはどういうわけか。これもイツァーク・ギルボアが指摘したように因果関係が特定できない事象のひとつであるのか。

強過ぎないのがいい - おそらく、そういうことなのだろう。ひところ流行ったゴルディロックス経済である。強過ぎもせず、弱過ぎもしない、ちょうどいい塩梅。強弱入り交じっているのがポイントなのだろう。これが完全に強い経済指標がそろってきたら、FRBの出口戦略が明確に意識される。現在のように、強いものと弱いものが混在している状況では、FRBによる金融緩和がまだ継続されるとの期待も温存される。つまり、相場に都合の良いような解釈がいくらでも成り立つのだ。悪ければ悪いなりに、明るい面、ポジティブな面を見ようと市場が前向きになっているとも言える。投資家心理の改善 - それが強い地合いの背景。そう言ってしまえば身も蓋もない議論だが。

それでもピッチに立つ

相場の見通しを外すと、いろいろなことを言われる。文句、苦情、批判、非難、誹謗、中傷、もろもろである。
「こんなに予想を外して、それでもプロか!」
「責任をとって辞職しろ!」
「お前が下がるというから、売ってしまったじゃないか、どうしてくれるんだ、この野郎!」
「お前が下がるというから、買わないで待っていたら買い場を逃してしまったじゃないか、どうしてくれるんだ、馬鹿野郎!」

罵詈雑言の嵐に耐えながら、僕はサッカーのワールドカップ1994年アメリカ大会の決勝戦を思い出していた。決勝はイタリア対ブラジル。炎天下のデー・ゲーム、両チームとも死力を尽くした激闘の末、延長戦でも0-0のまま決着は決勝としては史上初のPK戦へともつれ込む。一人目のキッカーはイタリア、ブラジルともに失敗。二人目、三人目はともに成功。ところがイタリア四人目のマッサーロが外したのに対してブラジルはドゥンガが決め、この時点で3-2とブラジルが優勢に。イタリア最後のキッカーは稀代のファンタジスタ、ロベルト・バッジョ。バッジョが外せば、その時点でブラジルの優勝が決まる。

バッジョが蹴ったボールはゴールポストを遥かに越えて外れた。この年、世を去ったブラジルの英雄、F1ドライバーのアイルトン・セナが導いたのだとも言われた。優勝したブラジル・チームはこの勝利をセナに捧げるとコメントした。
アイルトン・セナは生前、こんな言葉を残している。
理想を語ることは簡単だが、自ら実践するのはすごく難しい。
だからこそ、とにかく、どんな時でも、ベストを尽くして生きなければいけない。
その結果、うまくいく時もあれば、そうでない時もある。間違いを犯すこともあるだろう。
でも、少なくとも、自分自身に対しては誠実に、そして、自らの描いた夢に向かって、精いっぱい生きていくことだ。
僕は辞められない。
進むしかないんだ。

自分が感じていることは、正しくないかもしれない。
もしかしたら、自分の五感すべてが間違っているのかもしれない。

だから、常に自分をオープンにしておくんだ。あらゆる情報や、たくさんの知識を、受け入れられるように。耳を傾けて、新しい情報を、聞き逃さないように。
そうすれば人間も、マシンも、徐々に限界を超えていけると、僕は信じているんだ。
(アイルトン・セナ)

相場は難しい。予想は当たることもあれば外れることもある。相場を当てても誰にも褒められもしないし感謝もされない。予想を外すと非難轟々。それでも僕は株式相場というピッチに立ち続ける。

満身創痍のロベルト・バッジョが、決勝のPKを外した後、腰に手を当て、うなだれながらも毅然と述べた言葉を支えにしながら。

「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気がある者だけだ。」
(ロベルト・バッジョ)




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

■ご留意いただきたい事項
マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を提供することはありません。
本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわすものではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。
当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、マネックス証券のウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」(※)をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。
((※)https://info.monex.co.jp/policy/risk/index.html)

■利益相反に関する開示事項
当社は、契約に基づき、オリジナルレポートの提供を継続的に行うことに対する対価を契約先金融機関より包括的に得ておりますが、本レポートに対して個別に対価を得ているものではありません。レポート対象企業の選定は当社が独自の判断に基づき行っているものであり、契約先金融機関を含む第三者からの指定は一切受けておりません。レポート執筆者、並びに当社と本レポートの対象会社との間には、利益相反の関係はありません。

(マネックス証券)


マネックス証券
株式売買手数料(指値) 口座開設
10万円 30万円 50万円
100円 250円 450円
【マネックス証券のメリット】
日本株投資に役立つ「決算&業績予想」、信用取引ではリスク管理に役立つ信用取引自動決済発注サービス「みまもるくん」が便利。米国株は最低手数料5ドル(税抜)からお手軽に投資が可能で、米国ETFを通じて世界中に分散投資できる。投資先の調査、リスク管理、リスク分散など、じっくり腰をすえた大人の投資ができる証券会社と言えるだろう。一方、短期・中期のトレードに役立つツールもそろっている。逆指値ほか多彩な注文方法が利用できる上に、板発注が可能な高機能無料ツール「新マネックストレーダー」が進化中だ。日本株、米国株、先物取引についてロボットの投資判断を日々配信する「マネックスシグナル」も提供しており、スイングトレードに役立つ。
【関連記事】
◆AKB48の4人が株式投資とNISAにチャレンジ!「株」&「投資信託」で資産倍増を目指せ!~第1回 証券会社を選ぼう~
◆マネックス証券おすすめのポイントはココだ!~日本株手数料の低さ、ユニークな投資ツールが充実しているネット証券大手
マネックス証券の口座開設はこちら!

 

株主優待名人の桐谷さんお墨付きのネット証券!最新情報はコチラ!
ネット証券口座人気ランキングはコチラ!
NISA口座を徹底比較!はコチラ
株主優待おすすめ情報はコチラ!
優待名人・桐谷さんの株主優待情報はコチラ!

 

Special topics pr

ZAiオンライン Pick Up
[クレジットカード・オブ・ザ・イヤー2017]2人の専門家が最優秀クレジットカードを決定! 2017年版、クレジットカードのおすすめはコレ! おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードは、 本当は“ゴールド”ではなく“プラチナ”だった!? 日本初のゴールドカードの最高水準の付帯特典とは? 高いスペック&ステータスを徹底解説!アメリカン・エキスプレスおすすめ比較
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
じぶん銀行住宅ローン 「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」付帯サービスはプラチナカード顔負け!最強ゴールドカード 実力を徹底検証  アメリカン・エキスプレス・スカイ・トラベラー・カード 「アメリカン・エキスプレス」が誇る、高いスペック&ステータスを徹底解説!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

新理論株価で儲かる株
株主優待ベスト130
ふるさと納税ベスト86

1月号11月21日発売
定価730円(税込)
◆購入はコチラ!

Amazonで「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!


【株主優待ベスト130&新理論株価で買う株】
桐谷さん&優待ブロガー&ザイ読者が厳選!
 初心者も安心!株主優待ベスト130
失敗しない優待株の投資のワザ
●「優待+配当」利回りベスト30
少額で買える優待株ベスト30
権利確定月別の優待株ベスト 130
新理論株価まだ買える株68
年末までに駆け込め!ふるさと納税86
 3大カニマップ&寄附額管理シート付き! 
iDeCoつみたてNISAもこれが大事!
 騙されるな!投資信託選び10の落とし穴
●高配当&高成長の米国株ベスト12
地方上場の10倍株&佐川急便の投資判断
別冊付録!つみたてNISA完全ガイド

「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!

>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

Apple Pay対応のクレジットカードで選ぶ! Apple Payに登録して得する高還元率カードはコレ! 堀江貴文や橘玲など人気の著者のメルマガ配信開始! 新築マンションランキング
ZAiオンラインPickUP