第11回 <br />鯛1匹を料理する<br />~鯛飯、松皮造りの刺身、潮汁~第11回 鯛1匹を料理する(鯛飯、松皮造りの刺身、潮汁)

「目出度い(鯛)」という語呂から縁起の良い高級食材としてお馴染みの「鯛」ですが、春は「桜鯛」、秋は「紅葉鯛」と称せられ、ともに春と秋が旬です。

 桜や紅葉などを始めとしたさまざまな植物の色彩で季節の移り変わりを楽しめるのが日本の四季の良さですが、「食欲の秋」と言われるこの季節。見た目の美しさはもちろんのこと、舌でも季節のおいしさを存分に味わいたいものですね。

 今回の「休みの日のごはん」では、七五三やお正月などの節目の行事のメニューとして知っておくと重宝する、ちょっと贅沢な鯛をまるごと1匹使った料理をご紹介します。

 鯛の頭を「潮汁」に、骨付き半身を「鯛めし」に、残りの半身を「松皮造りの刺身」にして、鯛1匹で3品作りますので、普通の大きさの鯛でも4~5人分のご馳走が出来上がります。高級食材ではありますが、鯛の大きさによってはさらに大人数でも楽しめますので、実はそれほどお値段もかさばりません。

「切り身ならともかく魚まるごと1匹なんて難しそう!」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、魚をさばくのが苦手な方は魚屋さんに下処理をお願いしましょう。もちろん鯛をまるごと1匹買わなくても、アラや切り身でもOKです。

 魚屋さんにお願いする場合は、「しっかりと鱗を取って、頭は潮汁用にお椀に入る位にカット、身は2枚に卸して、骨付きの身は焼き用に切り身に。骨なしの方の身は松皮造りにするので皮は取らずに刺身用に」と伝えましょう。これなら捨てるのは内臓だけです。

 養殖物も天然物も、目が澄んで弾力があり、腹が引き締まっている物を選びましょう。予算に余裕がなければ養殖物でもしっかりと塩をして30分以上寝かせれば天然物に近い味になります。

 なお「松皮造り」とは、お湯を掛けた時の皮目が松の皮の様になることから付いた料理用語です。日本料理は何とも風情がありますね。春は桜の塩付けを、秋は菊の花びらを添えると、より季節感が味わえます。