相続対策をした有田家の場合

 さて、有田家の祖父は、銀行の支店長をしていたこともあって、財産管理とか税金対策といったことに、関心が深かったようです。有田家は無田家と500mも離れていないところにあります。

 有田家でもこの約20年の間に、無田家と同じように、祖父が亡くなり、祖母も亡くなり、また父親も亡くなりました。ところが有田家では、現在も同じ場所に住んでいます。ただ違うところは、かつての広い庭にはマンションが建っているということです。このマンションは、もちろん有田家の財産で、相続税対策のために借金して建てたということです。

 有田家ほどの財産があるならば、これだけの対策で済むはずがありません。数十年にも渡って「生前贈与」を繰り返し、またあらゆる相続対策を考え、実施してきたとも聞きます。

 20年ほど前は、同じくらいの財産家であった有田家と無田家です。しかし、何の相続対策もしなかった無田家はその地から消えてなくなり、万全の相続対策をした有田家は、財産家として現在もその地に残り、地域の有力者として存在しているのです。

 同じ財産の家族で、相続対策をしたかしないかによって、こんなに差が出てしまうのは不公平だと思われるかも知れません。税金は、本来、すべての人に公平にかかるべきものであるはずです。

 ところが、有田家は税金をごまかしていたわけでもなく、財産をかくしていたわけでもありません。相続税法に従って、ちゃんと税金を計算して納めているのです。ただ有田家では、相続税を実によく研究し、節税対策を実施していたにすぎません。

 有田家も無田家も、相続税法の規定に従って公平に税金を納めているのです。相続税法に不備があるとか、税務署に怠慢があるといったわけではありません。