いよいよバブル崩壊へ…

 聴衆は、安倍晋三首相のブレーンとして内閣官房参与にも就任した浜田教授がどんな人なのか、ひと目見てみたい一心のようだったから、私は自分のプレゼンを早々に終えた。それより頭の中は国債のことで一杯になり、パネルディスカッションの最中も、聴衆はおろか浜田氏も目に入らず、演壇の上で頭をかきむしりながら、国債市場の今後のことを考えていた。

 いよいよ、バブルは崩壊する――。

 特殊なバブルである国債「ハイブリッド・バブル」と「日銀買い入れバブル」が融合して、さらにハイブリッド化したバブルは、典型的なバブルとして大きな花火のごとくパッと煌めいて消えていく。ただし、その消え方は、大きな花火がほかに引火して火事になるのか、線香花火のようにポトリと落ちるのか。どちらの結末を迎えるか、それを結論付けるべく、私は学会終了後、自宅の書斎へと帰路を急いだ。

 典型的なバブルとなり、ついに国債バブルが崩壊を迎える。それが決定づけられた瞬間、リフレ派と議論をする演壇にいたのが、私にとって幸運だったか不幸だったかは分からない。だが私は、あのときの演壇から見た景色と感覚を一生忘れないだろう。洪水が押し寄せているのに気づかないまま、人々が雨を降らせるにはどうしたらいいか議論しているような光景を。

 5月16日に刊行した『ハイブリット・バブル』では、アベノミクスと呼ばれる3本の矢のうち、第1(大胆な金融政策)と第2(機動的な財政政策)の矢をつなぐ国債が崩壊することによって、第1と第2の矢に火がついて燃え尽き、実体民間経済に延焼する構造とプロセスの描写・分析を試みている。本連載では、その一部をご紹介したい。※次回は5月27日更新予定です。


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ハイブリッド・バブル  日本経済を追い込む国債暴落シナリオ

【プロローグ】 黒田日銀がヤバい

暴落しない静かなバブルは、
国債依存症となった金融機関の安楽死、
ひいては日本経済の安楽死につながる。

 日本の国債が暴落リスクと隣り合わせと言われながら、高価格・低金利を維持してきた「不安定な安定性」の均衡メカニズムを分析し、黒田東彦総裁率いる日本銀行が国債買い上げを進めることでこの均衡が崩れ、普通のバブル化を起こしつつある現状と今後の見通しを明らかにします。果たして国債バブルは崩壊するのか?大口保有者である金融機関の未来は?非効率な国債への資金投下が続く日本経済の行く末は?今後を考えるうえで示唆を得られる1冊です。ご一読ください!

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◇再放送:5/31(金)23:00~23:30、6/1(土)10:30~11:00、
6/2(日)20:00~20:30
◇ウェブ配信:6/3(月)18:00〜18:30 NIKKEI Channel