生保は変わるか?

 誰もが国債暴落というテールリスク(発生確率は低いが、生じれば甚大な悪影響をもたらすリスク)を感じ始めたいま、焦点となるのは「生命保険」という投資家である。生保が動き始めるとヤバい。

 すでに大手の金融機関などファンダメンタルズに基づいて買う第2の投資家の一部は、資金を外債やETFに移し始め、国債市場から退きつつある。そんなときに、長期国債市場でもっとも大きな存在感をもつ生保が行動原理を変えると、国債市場全体を流動的な市場に変調させる。

 生保はもともと財政破綻リスクに目をつぶる第3の「限定合理的」投資家だ。特に超長期国債に関しては独占的な買い手として自分のペースで好きなように買ってきた。債務に会わせた資産構成にするよう制度上迫られていることや、株式保有が不利になる制度変更などから、超長期国債の圧倒的な買い手であり続けたのだ。

 しかし昨今は、日銀の政策変化の思惑も絡んで、ヘッジファンドなどが買いを仕掛けてきた場合、これを生保がチャンスとして利回りと同時にキャピタルゲインを狙って積極的に買う可能性が高まっている。そして、生保がタイミングを見て大きく動くようになれば、その動きを予測し、利用してもうけようとする投資家が多数参入してくるだろう。

 こうして、買いでも売りでもトレンドを追い、追随売りをする投資家が増えてくると、売りが思ったよりも多く出たときに投資家が動揺する可能性が出てくる。もちろん長期保有をすればよいので投げ売りする必要はないのだが、売買モードにいったんギアが入ると、行動原理が変わってしまうのだ。