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5月22日 18時0分
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アベノミクスへの的外れな評価と投資パフォーマンス - 村上尚己「エコノミックレポート」

メディアでは、アベノミクスへの様々な論評が報じられている。「アベノミクスの成功はまだ確約されていない」「成長戦略・痛みを伴う構造改革は踏み込み不足」「成長戦略が真の回復をもたらす」など、懐疑的な論調も目立つ。アベノミクスをどう評価するかで、すでに大幅高となっている日本株などリスク資産への投資に、今度どのように臨めばよいか判断が分かれるだろう。



以下では、筆者なりのアベノミクスについての考えを改めて述べたい。まず、アベノミクスの具体策として「3 本の矢」が掲げられている。この中で、第1 の矢とされる金融緩和強化策が、筆者は最も重要だと考えている。



この矢がきちんと命中すれば、これだけでデフレ脱却が実現し、そして日本経済は正常化するからだ。物価の安定は、古今東西、中央銀行の政策と責任によって実現されるのが常識である。そして実際に、黒田・岩田体制にシフトして4 月4 日レポート「完全に生まれ変わった日本銀行〜アベノミクス相場は続く〜」の通り、日本銀行はまともな中央銀行に生まれ変わった。



もちろん、金融緩和だけで、日本経済が抱える問題がすべて解決するわけがない。ただ、多くの経済問題が改善に向かう。だから、金融緩和策の強化こそが第1の矢であり、これがまず成功しなければ、仮に第2、3 の矢が打たれてもその効果は顕在化しない。アベノミクスが成功しつつあるのは、第1 の矢の重要性を正確に見定めたからである。



第1 の矢つまり、脱デフレをもたらす必要な金融緩和を行うことの重要性を評価していないメディアや識者などが、より重要と論じている問題とは何か?彼らが煽り気味に述べるのは、例えば、財政赤字や公的債務拡大、そして、年金医療など社会保障制度の揺らぎなどがある。更に、最も大きな問題として、少子化や高齢化も挙げられる(どの程度「問題か」の議論の余地はあるが、ここでは扱わない)。



ただ、これらの問題の経済的側面は、インフレと経済成長によって事態は相当改善する。例えば、少子化はいくつかの要因が影響しているが、公的な育児支援制度の不備そして現役世代の経済的貧困などが経済的な原因となっている。



育児・子育て支援については、実際に、子育て世代や教育関連分野の日本の財政支出(GDP比)が国際的にかなり低い。これが、日本の少子化を加速させる経済的要因となっている(なお、この政策だけで少子化が止まると、筆者は思っていない)。



この問題は、硬直的な制度維持に励む官僚組織にも責任があるが、根幹の原因は、バブル崩壊以降の日本銀行による相次ぐ失政で、デフレと低成長が長期化し、税収が落ち込んだことにある。その結果過去20 年にわたり、政府が必要な支出を行うことが難しくなり、財政政策が硬直し機能不全に陥ったのである。



第1 の矢である金融緩和政策が効果を発揮し、脱デフレと経済成長の実現によって、これまで極度に落ち込んでいた税収は、消費増税などの税制改革が多少先送りになっても回復する。グラフを見ればわかるが、1990 年代以降の日本の財政赤字拡大は、税収の変動で説明できる面が大きい。脱デフレが果たせなかった2006〜7 年時の税収レベルをみれば、第一の矢だけで10 兆円以上の税収増、同規模の財政赤字縮小が実現する。







脱デフレだけで日本の財政収支が完全に健全化する、とまでは言わない。ただ、まともな経済成長やインフレ率が実現しないと、必要な公的部門の支出の見直しは現実的に進まないのである。先に説明したように、税収が増えないから、税金の使い方として国民のニーズが高い、子育て世代への柔軟な支出が実現せず、少子化を加速させる一因になった。



そして、少子化をもたらす第二の経済要因である、子育て世代の貧困。これについても、2012 年7月19 日レポート「働けない若者を救うには」などで述べたが、1990 年代半ばにデフレが始まってから失業率の上昇が始まり、若年層の労働環境が劣悪化し続けた。この経緯を踏まえれば、脱デフレと経済正常化で貧困問題も和らぎ、これも少子化に歯止めをかける一因になる。



以上、少子化問題を例に挙げたが、経済成長とインフレへの回帰によって、事態が改善に向かう経済事象は極めて広範囲に渡る。巷に聞かれる、金融緩和を「第一の矢」として最重視するアベノミクスへの批判的な議論は、そうした点への理解が不十分にみえる。こうした的外れな評価を鵜呑みにする個人投資家の投資パフォーマンスは、なかなか高まらないだろう。



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(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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