2013年4月3日付の日本経済新聞では、「ソニーは金融会社」であることを指摘し、「家電などエレクトロニクス事業の不振に苦しむ現在のソニーを支えるのは保険や銀行といった金融事業」であると述べていた。

 上記の記事を読んで、「なるほど」と頷いているようでは遅い。ソニーの屋台骨を支えているのが金融事業であることは、この記事よりも1年4ヵ月前に公開した第75回コラム(ソニー編)で、具体的なデータを示して筆者がすでに証明してきたところである。

 ソニーに対する評価には1年4ヵ月もの時間差があるが、具体的なデータに基づいて導かれた結論であるならば、結局、読者を惑わせることはない。困ってしまうのが、具体的なデータに基づかずに、「~という見方がある」という表現で「孫引き」を繰り返す企業分析が横行するときだ。

 例えば、コンビニエンス業界。日本経済新聞では2012年12月20日付の記事で「市場は飽和し店舗数は5万店が上限」との『見方』があることを紹介していた。他のメディアでも「5万店」という数値が、しばしば用いられる。

 それはないだろう、ということで、第102回コラム(セブンイレブン編)では、筆者のほうで具体的なデータに基づいた分析結果を示して、セブンイレブンは現在よりも「2倍」の成長余力があることを証明した。

 しかし、巨大な組織力を誇るメディアの「見方」のほうが、世間の信頼性は圧倒的に高い。一個人のコラムでは、「2倍だなんて、あり得ない」という意見をいくつか頂戴した。

 その後の「現実解」はどうか。セブンイレブンとファミリーマートは2014年2月期までに、過去最高となる1500店舗をそれぞれ新設する計画を公表している。ローソンなども含めると、コンビニ業界は向こう1年間で4500店舗も増える予定だ。

楽天の業績を
読み解くのは難しい

 コンビニ業界の上限が「5万店」であるという根拠は何なのか。誰が最初に言い出したのか。筆者は興味がないので調べていない。問題なのは、誰かが言い出したことを、具体的なデータで自ら検証することなく、孫引きを繰り返す人々が(メディアを含めて)存在しているという点だ。

 マクロ経済は、例えばTPP(環太平洋経済連携協定)の例を出すまでもなく、自分に都合のいいデータを振りかざす場合が多いので、誰の主張が正しいのか、評価するのが難しい。それに対して、上場企業に対する経営分析の場合は、決算短信や有価証券報告書がある。そこに掲載されたデータは最低限、自ら進んでチェックしたいものだ。

 ただし、そうした心構えを持っていても、ときどき腕組みをして考え込んでしまうケースがある。それが今回扱う楽天だ。

 同社の決算データを読み解くのは、非常に難しい。おまけに、2013年以降、国際会計IFRS基準に移行している。「どうしてそういう数値になるの?」と考えながら、話を進めていくことにしよう。