関係性を紡ぎだすために必要な
エンターテインメントの要素

紺野 パートナーシップを結ぶかどうかの決断は、何を基準にするんですか?

本村 決め手は「人」です。ここはもう、完全に直観で、「この人は信用できる」と思えば一緒に動きます。

 関係性を広げるには、一種のエンターテインメント性も必要です。僕らが継続的に主催する展覧会やカンファレンス、ワークショップなどは、僕たち当事者に対しても、勿論、参加者に対しても「楽しめる」イベントでなければなりません。なぜなら、イベントに関わり楽しんでいただいた行為の結果として、僕たちの活動を支え、躍進させるヒト、モノ、カネ(経営資源)が集まってくるからです。

想像力を発揮すれば、仕事は面白くなり、<br />目的のために、手段をどう使うべきかが見えてくる<br />――対談:本村拓人×紺野登(後編)紺野登(こんの・のぼる) 
多摩大学大学院教授、ならびにKIRO(知識イノベーション研究所)代表。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。その他大手設計事務所のアドバイザーなどをつとめる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(経営情報学)。組織や社会の知識生態学(ナレッジエコロジー)をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、研究所などのワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。

紺野 そこは一種のコンテンツ・ビジネスですよね。日本ですっかり有名になったTEDも、「投資を募る」という行為をエンターテインメントにして見せたところに新しさがあり、成功の要因がある。

本村 関係性を構築するための場作りには、今のところ僕含め会社のわずかな人的リソースを投下して組み立てていかねばならないので、常に息切れしている状態です。しかし、この息切れしている状態を見せていくことも、とても重要なパフォーマンスだと思っています。

 日本人が相手の場合は、物理的な距離が近いのでフェイス・トウ・フェイスのコミュニケーションで何とかなります。これに対し、海外が相手の場合は、毎回、相手の心に訴えかけるストーリーを持って行かないと難しい。

 先ほどのフィリピンのケースで言うと、変な話ですが、日本人男性は現地ですごくモテます。「うちの嫁をもらってくれ」みたいな話を持ちかけられることも、しょっちゅうです。だから、時にはそういう状況を利用してジョークを言ったりもします。

「みんな、どうして蚊帳を使うの?」「それは、マラリアが怖いからじゃなくて、グッドスリープのためだよね」「じゃあ、そのグッドスリープって何?もしかして僕と一緒に寝ること?」とか。そういう冗談をまじえながら話すと、みんな一気に笑ってくれるので、すごく溶け込みやすいです。

紺野 そこはインスピレーションというか、実践知の世界で、世界中をバックパッカーして歩いた経験のある本村さんだからこそできることかも知れないですね。

本村 もちろん、フィリピンの場合英語が通じるということも大きいかも知れませんが、まずは、自分自身をモチベートしないと絶対に無理ですね。自分が本当におもしろいと思っていないと、仕事ってうまくいかないと思います。