橘玲の世界投資見聞録 2013年5月24日

フィリピン・マニラ 日本人高齢者を受け入れる介護サービスの現場
[橘玲の世界投資見聞録]

 「海外で年金生活」が話題を集めた時期があった。といっても、過去形にするのは間違っている。海外での長期滞在を支援するロングステイ財団が主催するセミナーや相談会はリタイアした団塊の世代でいつも満席で、ロングステイヤー(海外長期滞在者)の生活を取材する雑誌記事やテレビ番組も頻繁に目にする。

 だが海外生活への関心は、時代とともに少しずつ変わってきている。

 第一次のブームは1997年の金融不安の頃で、「日本の財政はいずれ破綻し円は紙くずになるのだから、日本を脱出して海外で余生を過ごすしかない」と考えるひとたちが現われた。私もこうした最初期の海外脱出組を何人か知っているが、けっきょく日本に帰ってきたひともいれば、現地で家族をつくり根を下ろしたひともいる。

 その後、2000年のインターネットバブル崩壊後の円高で、日本とアジアの国々の物価のちがいを利用して年金を有効活用しようと、海を渡る高齢者が増えてきた。タイやマレーシアが長期滞在の定番だが、フィリピンに向かう独身男性もいて、10年を経て「困窮邦人」が大きな問題になってきたことはすでに述べた。 

[参考記事]

●フィリピン・マニラの”困窮日本人”はいかにして生まれるのか?

  2008年のリーマンショック後の“超円高”によって、リタイアした団塊の世代の関心がふたたび海外に向かった。しかし最近は、年金を頼りに海外に永住するというよりも、日本を生活の拠点としつつ、夏や冬の時期だけ海外の別荘(セカンドハウス)にショートステイするひとたちが増えているという。

 こうした傾向は、社会の高齢化が進んだことで富裕な高齢者の絶対数が増えたことと、日本経済が長いデフレに苦しんだ結果、もはやアジアで暮らすことが「割安」ではなくなったことから説明できる。

 もちろんいまでもアジアのほとんどの国は日本より貧しいが、バンコクやクアラルンプールといった大都市で外国人向けのコンドミニアムに暮らし、日本料理店に通ったり、日本の食材を定期的に購入すれば、日本よりもずっと生活コストが高くなってしまう。アベノミクスで円安が進んだため、現地通貨で換算した年金が目減りして悲鳴をあげている退職者は多い。

 こうしていつのまにか、生活防衛のための海外生活は、富裕な高齢者の「第二の青春」へと変わっていった。

 しかし元気な高齢者も、10年後、20年後には介護の問題を抱えることになる。高齢者の増加と社会保障費の膨張を考えれば、そのときに日本の介護保険や医療保険制度が現在のまま維持できる可能性はかぎりなく低い。

 このようにして、海外で日本人の高齢者に介護サービスを提供するビジネスが模索されるようになった。

『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル 』

作家・橘玲が贈る、生き残りのための資産運用法!
アベノミクスはその端緒となるのか!? 大胆な金融緩和→国債価格の下落で金利上昇→円安とインフレが進行→国家債務の膨張→財政破綻(国家破産)…。そう遠くない未来に起きるかもしれない日本の"最悪のシナリオ"。その時、私たちはどうなってしまうのか? どうやって資産を生活を守っていくべきなのか? 不確実な未来に対処するため、すべての日本人に向けて書かれた全く新しい資産防衛の処方箋。 

★Amazonでのお求めはコチラをクリック!
★楽天でのお求めはコチラをクリック!

 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。


橘玲の書籍&メルマガのご紹介
世の中(世界)はどんな仕組みで動いているのだろう。そのなかで私たちは、どのように自分や家族の人生を設計(デザイン)していけばいいのだろうか。
経済、社会から国際問題、自己啓発まで、様々な視点から「いまをいかに生きるか」を考えていきます。質問も随時受け付けます。
「世の中の仕組みと人生のデザイン」 詳しくは
こちら!
橘 玲の『世の中の仕組みと人生のデザイン』 『橘玲の中国私論』好評発売中!

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。