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インキュベーションの虚と実

エンタープライズ市場の時代がやってきた!
クラウドやUXの進化で新たに生まれるニーズとチャンス

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第27回】 2013年5月27日
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 しかし、ユーザー企業はバカではない。

 大きな契約をとって、レガシーな(巨大な)システムを売るという従来のベンダーのやり方に問題を感じ、エンタープライズ分野での革新に期待して、スタートアップに注目しているのだ。

 顧客はレガシーでの苦い経験から、より気軽に使えるソリューションや、テクノロジーの革新を求めている――。ヒューレット・パッカードのAutonomyの買収は、従来型のモデルからの進化を探った末に大型投資に動いたのであろう(焦ったためか、拙速で不正会計を見抜けず約半額を減損処理した)。

 そして、Facebook株がIPO価格を割り込む一方で、IPOを大成功させたWorkday。同社は、2005年にOracleが人事系に強いERPソフトウェアのPeopleSoftを敵対的買収したことに伴い、同社を去ったデイブ・ダフィールド(Dave Duffiled)氏とアニール・ブースリ(Aneel Bhusri)氏が創業したスタートアップだ。PeopleSoftのクラウド版ということで注目され、2億5000万ドルを集めた。

 Workdayのサービスはユーザー毎のライセンスで小さく始められ、アップグレードや拡張も平易で、その上、システム運用も同社にお任せ。クラウドによるSaaSの利点を生かし、PeopleSoftの顧客をかっさらって成功している。

 このように、エンタープライズ市場は転換期を迎えている。ニーズをとらえ、クラウドを使ったモデルの革新や新たな技術イノベーションができれば、大きなビジネスチャンスがある市場であると言えよう。

塗り替えられようとしている勢力地図
広がるイノベーションの機会

 なお、WorkdayとAutonomyは例外ではない。この1年でブロックバスターIPO(数千億円級の大型IPOを成功させた)を果たしたベンチャーからいくつか紹介しよう。

事例1:Splunk(時価総額46億ドル)

 Splunkは、注目を浴びるビッグデータにおけるリーダー企業の一つとなっている、さまざまなシステムから生成されるマシンデータの収集、検索、分析を行うために開発された「ITシステムのためのデータ分析プラットフォーム」をウェブベースで提供している。データログの解析に役立ち、セキュリティ違反を見つけやすくなる。

事例2:Palo Alto Networks(時価総額36億2000万ドル)

 Palo Alto Networksは、アプリケーションやユーザーごとに通信の可視化やアクセス制御を行い、セキュリティリスクを回避する次世代ファイアウォールを開発した。従来のソリューションは向かってくる脅威を一律にブロックするのが主だが、これは不便を生じ仕事の生産性を下げる可能性がある。しかし、例えばFacebookへの社内からのアクセスが問題になることが多いが、マーケティング部門まで遮断するわけにもいかない。こうしたニーズに対応し、柔軟にセキュリティを実現する技術を提供している。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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