総務省の調査によって、新たに開放されるBS(衛星放送)デジタル放送の周波数に人気が集まっており、利用可能なチャンネル数の軽く10倍を超す参入希望が殺到している実態が明らかになった。

 実は、この周波数、今春まで不人気をかこっていた。地上波のキー局や電気通信事業者から、既存の商業放送と広告を奪い合うゼロサムゲームを発生させるだけだとの理由で、そっぽを向かれていたからだ。

 ところが、総務省が過去数ヵ月、柔軟に規制緩和を進め、従来無かったビジネスモデルを容認する姿勢を示唆したり、すでに国内で普及している約4000万台の受像機の大半に何の手を加えなくても視聴が可能とピーアールを展開したりしたことから、関係業界のムードが一変した。この結果、総合商社やCS放送の放送事業者、コンテンツ事業者などを中心に参入希望が急増したというのだ。広範な新規参入が実現すれば、新たなビジネスの創出、雇用・投資の拡大にも役立つとの期待も広がっている。

 麻生太郎内閣はこのところ、総選挙対策もあって、国の財政赤字を肥大化させる懸念の強い「追加経済対策」作りに躍起だ。だが、今回のBSのチャンネル拡大策は、公金の大盤振る舞いなどしなくても、知恵さえ絞れば経済を刺激することができることを示した好例としてもっと注目すべきである。

国際的な衛星用周波数の
獲得競争が背景に

 NHKが難視聴の解消などの名目でアナログBSの本放送を始めたのは、1989年のことだった。1991年には、WOWOWが有料放送を開始した。

 そして、2000年に、民放キー局(テレビ朝日、TBS、テレビ東京、日本テレビ、フジテレビ)5局も参加して、BSデジタルが始まった。

 さらに昨年暮れ、家電量販店ビックカメラ系のBSイレブンと三井物産系のトゥエルビが参入した。この結果、現在は、10の放送局が5周波数帯域を12のチャンネルに分割してデジタル放送を営んでいる。

 こうした中で、総務省は2000年に、国連の国際電気通信連合(ITU)から、新たに4つ周波数の割り当てを受け、BS放送の拡大準備を進めてきた。

 総務省を割り当て獲得に走らせた背景にあったのは、国際的な衛星放送用の周波数を巡る激しい獲得競争の存在だ。衛星の軌道や、衛星放送、衛星通信の周波数は稀少な資源であり、今後、各国の利用ニーズが高まり、いずれ枯渇するとみられている。当時も、ロシア、中国との獲得競争が熾烈を極めたという。