顧客一人ひとりの心の背景まで理解する

――坂上:現在、全国で1300店舗ほど展開しているとのことですが、どのような場所を中心に出店されていますか。

増本:やはりお客様にとっては、家から近いことが非常に重要な要素となります。そのため、住宅街や商店街のような場所に出店しています。実際、都心では店舗から半径500m~600m程度、地方の場合でも半径5km以内から通われているお客様が多いですね。商圏をこの距離に設定することで、口コミの効果が高くなります。

 出店した後は、町内会のような女性のネットワークがあるところにお伺いして宣伝し、集客を行いファンをつくっていきます。その後は、お客様の口コミで広げていきます。知名度が上がってきた今でも、新規顧客の75%が紹介ですね。

 また、通常のフィットネスクラブの場合、プールやシャワー室、大きなロッカールームなどがあり、どうしても大型化してしまします。ですが弊社では出来るだけ小型の店舗で、シャワー室を置かず、大きなロッカールームもなく、店舗の広さが通常の10分の1程度だということが、他のフィットネスクラブが踏み出せない場所に出店できる理由です。

――坂上:店舗の構成も全く違い、フィットネス業界にまさに革命を起こしているような印象を受けました。しかし御社のハードの部分はそれほど難しくなく、真似できてしまう面があるように思われます。御社でしかできない、ソフト面の強みについて詳しく教えてください。

増本:やはり人材と、きめ細やかなサービスです。実は、私たちと同じような女性だけの30分フィットネスに参入する企業が、大幅に増えたことがありました。150店舗規模のチェーン店ができ、大手フィットネスクラブも参入されました。しかし、今ではほとんど残っていません。今まで運動をしてこられなかった方に対しては、積極的にフィットネスクラブに通う方々よりも、非常に細かなサポートが必要だからです。

 例えば弊社では、なぜこの方は運動を始めようと思ったのか、その背景までヒアリングし、理解するようにしています。体重を5Kg落としたいと希望を述べられたお客様は、そもそもなぜ痩せたいと思ったのか。学生時代の友人と温泉旅行に行った時に自分だけ太っていて恥ずかしい思いをしたから、娘の結婚式で素敵なドレスを着たいから、などですね。お客様の気持ちの背景まで把握することによって、励まし方も変わります。