福沢諭吉の人生から見えること
『世界の伝記〈39〉福沢諭吉』

 これまで14回の連載を振り返って皆さんにも考えていただきたいのですが、歴史から何が学べるかという意味では、未来に対する建設的な希望を抱くと並行して、その未来に「つながる」ためには、極めて現実的な対応こそが必要になるということです。

 福沢諭吉が歴史に名を残した理由の一つは、彼が単なる夢想家ではなかった点にあると思われます。彼一人では何もできないし、彼だけが文明開化の思想を唱えても、社会は何も変わらなかったでしょう。彼は舞台を創る重要性を(恐らく)理解していたこと、また極めて現実的な側面(塾の経営など)を持っていたことから、実務家として当時活躍をしたことが大きかったのではないでしょうか。

 今回、書籍『「超」入門 学問のすすめ』を執筆した理由は、大変革期に私たちが何をすればいいのか、どうすれば未来を好ましいものに変えられるかを、140年間の歴史から学ぶためです。

 ここまで連載を読んでいただいた方に、ぜひお勧めした書籍を2冊書いておきます。

(1)『世界の伝記〈39〉福沢諭吉』福田清人・著(ぎょうせい)
(2)『座右の諭吉 才能より決断』齋藤孝・著(光文社新書)

(1)は福沢諭吉の伝記ですが、類書には見られない詳細な記述があり、諭吉という人物の人生行路を俯瞰して、時代の臨場感を理解するには格好の書籍です。

(2)は対談をさせていただいた齋藤孝先生のご著書ですが、私たちが日々の生活で諭吉の生き方をどのように活かせるか、平易な文章と鋭い考察が大変参考になります。

 繰り返しますが、カリフォルニアの女子高生が、画期的な充電装置を発明する時代です。未来への過渡期としての「現在」が、新たな舞台を世界中に作り始めているのかもしれません。歴史は違う形で、新たな時代への変化を生み出しつつあるのではないでしょうか。

健全な努力の先に、
「気がつけば未来」が到来する

 諭吉は、西洋社会を見たとき「無名の中産階級の人たちから、新技術や新しい文明は生まれている」と喝破しましたが、当時の江戸幕府からの「上からのご命令」だけでは、社会全体の能力を発揮させることができないと理解しての洞察だと思われます。

『学問のすすめ』を改めて分析する意義は、困難を極める時代でも、未来に対する軸を保持して努力を続けることが「気がつけば未来」に到達する道だとわかることだと言えます。今は無名であっても、道を開いた人の周囲には新たなストーリーが残っていく。

 誰も予測はできない、でも起こった出来事と人物には記憶に残る物語が加えられる。歴史はそれを繰り返しながら、社会を進歩させてきたのでしょう。

 140年前の日本という国の歴史が、21世紀の現代に生きる私たちに、一体何を教えてくれるのか?ぜひ歴史を超えた名著『学問のすすめ』を手に取っていただきたいと願っています。(連載終了)


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