最近、中国のある有名な若手エコノミストと国内外で数億ドルを運営する投資銀行の若手オーナー社長から現政権の経済運営に対する批判と懸念の声を聞きました。共に40歳前後です。

 エコノミストの主張は、現政権の経済運営は一言でいえば八方美人過ぎてやることが中途半端だ、というものでした。かつての朱栄基首相であれば、この時点でもっと思い切った金融引締めを行っていたはずなのに、現政権は中途半端な引き締めをするから株価もずるずると下がるばかりでなかなか底打ち感が出てこない。そもそも、一党独裁の国で和偕社会などと妙に民衆に媚びたようなことをいうことが気に入らない。所詮民主主義ではないのだから、中途半端な妥協はかえって危険である。和偕をいい口実に、結局現政権は目先の課題に対して自ら責任を取る気概がないのではないか、となかなか厳しい見方でした。

 投資銀行の社長は、今後の中国の経済の先行きに関して、目先2年間は調整局面が続くが長期的にはまだまだ高度成長が続くとの見方を示すなかで、唯一のリスクとして、かつてのような政府のコントロール力がない現政権のなかで政情が不安定になると、この経済成長も保証されないだろうというものでした。

一党独裁下での市場経済により、
噴出し始めた「矛盾」

 これらの批判と懸念は、まさに現在の中国の矛盾を象徴していると思います。市場経済と言いながら、実はまだまだ情報を独占した一部のセクターが富を独占するという矛盾。いくら中央が綱紀粛正を呼び掛けてもとどまることを知らない党員や政府幹部の汚職や不正。和偕社会といながら、所詮それは共産党の掌の上での民意重視にすぎない無力感。また、民意を重視すればするほど権利意識に目覚め政府幹部に対し不満を爆発させる民衆。まさにこの矛盾に満ちた状況の中で、この矛盾を爆発させないように、騙し騙し運営されているのが現在の中国なのでしょう。

 上記の矛盾を図式すると以下の通りとなりますでしょうか。以下の2つの循環がすれ違い、複雑に絡み合っているのが現在の中国なのではないでしょうか。

◎中国の中にある2つの「矛盾」
中国の中にある2つの「矛盾」