先行条件のスローガンだけ掲げても、人は動かない

 一方、B課においてはどうだったか。もちろん、最初はB課長も「アイデアを出して」と言ったに違いないのですが、部下たちが行動を起こしたあとの結果を重視しました。

 部下たちにとって、「行動を起こしたら良いことがあった」という結果を課長自らつくりだしたので、部下は繰り返し行動してくれたのです。

 実は、人が行動を繰り返すとき、先行条件よりも結果の力のほうが大きいのです。一つの行動を起こした結果は、次の行動を起こすための強い先行条件となり得ます。

 たとえば、「お菓子をすすめられた」という先行条件があって、「食べる」という行動を取ったときのことを考えてみてください。その結果が「おいしかった」ならば、すすめられなくてもまたそれを食べるでしょう。「まずかった」ならば、すすめられても再び食べたいとは思わないでしょう。

 A課の部下たちにおいては、いつまでたっても「出せと言われたから」という先行条件しかないのですが、B課の部下たちにとっては「出せば褒められる」という良い結果があり、それによって行動が繰り返されているわけです。

 A課に限らず、どこの企業でもここが見落とされています。

「我が社の危機的状況を踏まえ、徹底したコスト管理を図ってくれ」
「売上三割アップを目指し、一人ひとりが積極性を発揮しよう」
 などと、先行条件のスローガンばかり掲げても、人は動かないということを覚えておいてください。