世界相手でも委縮しない高い目線と使命感を

 徳重さんがおっしゃるビジョンとは、クレードと同じですね。伸びる会社はクレード(理念)、失敗する会社はグリード(貪欲)なんですよ。発音がよく似ていますが、意味はまったく違う。私は、古巣であるジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条」でクレードの重要性を学びました。だからこそクレードの意義を多くのビジネスマンに理解していただきたいのです。

徳重 そうですね。それからグローバルに活動したいならば、僕は目線の高さが重要かなと思っています。

 先日シリコンバレーに行ってきました。友人が電気自動車の最大手・テスラモーターズで働いているので工場を見せてもらったのですが、3年前に30人で始めたのに、今や社員は2000人。このスピード感と勢いに圧倒されました。

 すごいですね。

徳重 シリコンバレーで大を成している人は、やはり使命感を持っています。本気でイノベーションを起こしたいと思っている人、仕事にワクワク感を忘れない人が多く、ビジョンを持った人がメガベンチャーを誕生させている。

 私が電動バイクで起業したのも、シリコンバレー時代の友人と話していたときにたまたま電動自動車の話が出て、電動バイクならイノベーションを起こせると思ったからです。

 先ほども言いましたが、世界には成功事例がたくさんある。だから日本の起業家にはもっと高い目線と強い使命感を持ってほしいですね。

人、本、かけがえのないメンターとの出会い

 それから、これは特に若い経営者の方に何度も申し上げていることなのですが、「経営の原理原則」を忘れないこと。よく「会社が飛躍的に成長する秘策は何ですか?」と聞かれますが、ある日目が覚めたら自分や会社が飛躍的に成長していた、なんてことはありえません。

 たとえば、我が社のコストを年5%削減するというのは「改善」と呼ぶべき取り組みですが、それを13年も続けると削減率は50%になります。そうなるとこれはもう「改革」ですよ。普段の不断の努力が実を結ぶのだから、毎日コツコツと頑張るしかないでしょう。

 そうは言っても、私は働いていて苦しいと思ったことはかつて一度もありませんでしたけれどね。むしろ楽しいと思っていました。もちろん挫折は味わいましたけれど。徳重さんはどうですか?

徳重 起業してからよりも、帰国して実際に電動バイクで起業するまでの、方向性を模索しているときのほうが苦しかったですね。

 僕は山口県出身で同郷の高杉晋作を自身のメンターだと思っています。僕がやっていることは、ほかの日本人から見ればクレイジーなことかもしれないけれど、高杉晋作や先人たちがやったことを考えれば、たかが知れていると思っているので、今はさほど苦しいとは思いませんね。

グローバルに活躍できる人財・企業になるために<br />経営者、組織を率いるリーダーが<br />身につけておくべきことともに世界の舞台で勝負を続けてきたお2人。ビジョンを掲げ、情熱を注いで取り組むことの大切さをよく知っている点も共通だ。

 私も講演会などでは「知恵や勇気を与えてくれるメンターを3人は持ちましょう」とアドバイスしています。すばらしいメンターがいれば、経営者は道を踏み外すことはないでしょう。

 人のほかには、「ブックメンター」というものもありますね。つまり、良い本との出会いです。

徳重 私は大学のころにビジネスマンとして成功したいと考えいろいろな本を読みあさっていましたが、そのときに新さんの本も読ませていただき、感化されました。

 嬉しいですね。若い経営者にこそ私の本を手にとってほしい。1人でも多くの方のブックメンターになれたらと常に思っていますよ。

***

 大学時代に新氏の著書を読み、ビジネスパーソンとしての成功を誓った徳重氏。そして自身の経験をベースにグローバルリーダーの育成に邁進しつづける新氏。世代は違っても、ともに世界を相手に戦った経験を持つ者どうし、そして大義を抱いてビジネス人生を歩みつづける者どうしの話は尽きませんでした。

次回は、6月17日に更新を予定しています。

この対談は、5月24日に東京で行われた新将命氏×徳重徹氏対談「グローバルリーダーの原理原則」の内容を編集・再構成したものです。

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