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風俗と慰安婦とアメリカ兵の問題
橋下発言と、その報道に思うこと

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第33回】 2013年5月31日
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 橋下徹大阪市長兼維新の会共同代表が、在日米軍司令官に風俗の活用を奨めた発言を撤回し、謝罪した。徹さんの発言が一回転するから撤回なのかはさておき、撤回に至るまでの経緯は多くのメディアが報じているから措いておくにしても、だ。

 橋下さんが言いたかったのは、アメリカ兵による犯罪……、とりわけ多発する性犯罪を何とかできんのかお前らは、ということだったはずなのだが、この問題が報じられて以降、論点はどんどん違う方向へ逸れていった。

 戦場で生命を賭す兵士たちの極限の緊張状態を和らげるために、との主旨で風俗と慰安婦の話を持ち出したのだが、弁護士資格を持つ論者が用いたレトリックとしては稚拙だった感は否めないにしても、だ。

 橋下さんの真意を問い、なおかつ、アメリカ兵が犯す犯罪の実態はどうなのかを取り上げるメディアはなかった。橋下さんを擁護しろとまでは私も言わないが、橋下発言の背景に言及し、橋下さんが何故あのような要請をしたのかに触れるメディアがあってもいいはずだった。

 横須賀基地のある神奈川県だけで、この一年に性犯罪や家宅侵入、暴行、傷害罪で逮捕されたアメリカ兵は二〇人をくだらないんだぞ。不祥事の総合商社と言われる神奈川県警だって道を譲るくらい問題を起こしているんだぞ、アメリカ兵は。

 つい一昨日も、横須賀で女子中学生のスカートの中を盗撮しようとしていたアメリカ兵が捕まったんだぞ。逮捕したのは神奈川県警だけど。相模原署内の交番では、相談に来た女性にわいせつ行為を働いた巡査もいたけど。

 橋下批判が噴出する中で、先週は長崎県佐世保市でアメリカ兵による強姦事件が発生した。こういう大事な問題を放っておいて、メディアの論点は従軍慰安婦問題一色だった。いまもなお、その傾向は変わらない。

 発端は橋本市長の発言には違いないが、風俗の話が従軍慰安婦に飛んで、歴史観の話になり、村山談話と河野談話が掘り起こされ、強制連行があったか否かで識者が激論を飛ばす。問題視するのはそこですか? と首をひねっていたのは私だけなのかしら。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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