世界各地のバー、レストラン、酒屋、スーパーマーケット等で広く見られる代表的な酒というと、ビール、ワイン、ウィスキーです。果たして、日本酒はこうした「世界の酒」の一角を占めることができるのか?専門家の意見も交えて考察します。

世界の酒へ向け
第一歩を踏み出した

 仮に「世界の酒」を、広く世界でつくられ流通し飲まれているお酒、逆に「地域の酒」を、限られた地域でつくられ流通し飲まれているお酒と定義します。すると、それぞれ程度こそ異なるものの、ビール、ワイン、ウィスキーは、まさしく世界の酒といえるでしょう。

 一方、国内の販売量が過去30年間で3分の1近くになり、国内市場の縮小に歯止めがかからない、我が日本酒はどうでしょうか。まず、そのほとんどが日本でつくられています(アメリカ等一部の海外産を除く)。次に、主に日本国内で流通し、日本人が飲んでいます。輸出量は、過去10年で倍増したとはいえ、販売量全体のわずか2%程度で、絶対量としては日本へのワイン輸入量の約10分の1に過ぎません。

 また、海外での流通先の多くは日本食レストランや日本食材店、飲む人の多くは海外に住む日本人や、日本に行ったか住んだことがある外国人です。つまり「ジャパニーズコミュニティー」で、製造・販売・消費がほぼ完結する「地域の酒」なのです。

 ところが、ここ10年ほど前から、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、パリなどの大都市を中心に、一部とはいえ高級バー、レストラン(フレンチやフュージョン系)、酒屋、スーパーマーケット等で日本酒を見かけるようになりました。

 たとえばここパリでも、クリヨン、リッツ、マンダリン、シャングリラ、ロイヤルモンソーなど最高級ホテルのバーカウンターに日本酒が並びます。そして、日本に行ったことも住んだこともない外国人が、日本酒を飲み始めています。このように日本酒は、世界の酒に向けて一歩を踏み出した初期段階にあるといえます。