
「そこに書かれているのは、特段、驚くべき戦略ではない」と東京のビジネススクールでマーケティングを担当するアメリカ人講師は指摘する。彼らが行ったのは、マーケティングの入門書に書かれているような、ごくシンプルな原則だ。「どんな商品を、誰が、どうやって買うか」。同社ローカルスタッフ(つまり日本人)が、これを忠実になぞった結果、「Product Innovation」を日本市場にもたらした、というわけだ。今でこそ、競合商品が存在するが、2003年には実に1500億円を売り上げるに至ったと言う。
日本企業に見られる顕著な傾向がある。商品については「うちでは昔からこうと決まっている」、販売については「いずれ口コミで広がるから」と言うもの。これらが上海市場で通用しないことは、最前線でビジネスに携わる現地駐在員であれば骨身にしみてわかっている。
「日本企業が上海で勝てない理由、それは日本国内だけにしか目が向いてないことにあります。組織のあり方、幹部の力量、リサーチやマーケティング力が世界に通用しないこと、これにいまだ気づいていません」
折りしも、経済産業省が所管する産業構造審議会基本問題検討小委員会が今年7月、「知識組替えの衝撃 ~現代の産業構造の変化の本質~」という報告書を提出した。その中で、グローバル化が進展しつつも、「ファッション、日本料理、伝統工芸、アニメなどの『ジャパン・クール*2』はビジネスに結びついていない」と指摘しているのは大変興味深い。
国を挙げてこれほどの仕掛けづくりをしながらも、結果、絵に描いた餅に終わる可能性はないとは言えない。上海市場について言うならば、「日本ブランドなら出せばいくらでも売れる」と言う、売り手側の勝手な幻想が成功を妨げていると言える。「所詮、中国」はもはや通用せず。時代と市場を読み間違えれば、そこには敗退という結末しか用意されていない。
【筆者注】
*1 「J@pan Inc」は海外市場向けに日本のビジネス情報を伝える英文情報誌。
*2 『ジャパン・クール』は、ファッションやアニメ、ゲーム、食など日本の文化をビジネスにつなげる活動。一部が外国で人気を集め、ブームになっている。