アメリカの過大な消費に支えられて、好況を「演じていた」世界経済。その裏でアメリカ国内では、3つの条件(低い借入れハードル、住宅価格(=担保価値)の上昇、リスク分散の仕組み)に支えられ、あやういバランスの中でサブプライム・ローンが積み上がっていたのは、前回ご説明した通りです。

 しかし、この3つの条件の1つが成立しなくなり始めたところから、歯車は一気に逆回転を始めました。その狂った最初の歯車は、住宅価格の上昇です。

上昇が止まった住宅価格と
急上昇を始めた延滞率

 1990年代前半から上昇を始め、担保価値の上昇を通じてアメリカ国民の借入れ余力を高め続けていた住宅価格でしたが、2006年に入ってその上昇が止まります。長年の断続的な資金流入に支えられ、増え続けていた住宅供給が明らかな過剰なレベルに達したのです。

 また、その頃までには、住宅バブルを懸念したFRBが引き締めスタンスに転じ、1%台であった2004年5月から2006年6月の5.25%へと、政策金利は上昇を続けました。当然、これに応じて住宅ローンの金利が上昇すれば、変動金利で借りていた住宅ローンの返済額は急増することになります。

 これに加えて、2003年から2004年頃に過去例を見ない低金利で組んでいたローンの、3年間の「当初優遇期間」が2006年以降順次終了し、急増した返済額を支払えず延滞が増えることになりました。そして、上昇が止まった住宅価格と上昇した金利環境の中、それまでのように借り換えることもできず、いよいよサブプライム・ローンの焦げ付きが始まったのです。下のグラフのように、2007年以降、住宅ローンの延滞率は上昇を続け、差し押さえも急増しています。

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 こうして差し押さえられた住宅が次々と売却され始めると、住宅価格は下落を始めます。一度狂い始めた歯車は、その逆回転の速度を一気に速めました。住宅価格が下がる→住宅ローンの支払いが滞る→差し押さえが上昇する→そしてまた住宅価格が下がる、といった負の循環に入ってしまったのです。

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