潰されるとしても飛田は最後に
スカウトマンが描く10年後

開沼 5年後、10年後、飛田の街はどうなっていると思いますか?東京でも繁華街浄化作戦のような動きがいろいろありましたし、大阪でもダンス規制のように行政が突然牙をむくこともあったわけですが。

杉坂 たぶん、たぶんですけど、これも二極化じゃないですけど、潰すにしても飛田は最後になると思います。松島とか信太山、今里、滝井ってたくさんあるんでね。潰すと名前が大きく出るけど、大勢に影響がないのは今里と滝井なんですよ。今里は4~5軒、滝井がたしか8軒だったかな。じゃあ、その8人はどうすんねんて話でもありますが。

 警察はたぶん知ってると思うんですけど、滝井新地はみんな松島新地の支店なんですよ。だから、「あそこを潰しても松島で生き残れるやろ」という感じもあるかもしれません。ただ、街全体を潰すならまず今里。今里は在日の方なので、日本人じゃないことが不利なんですよ。

開沼 なるほど。

杉坂 西成区は飛田があって、あいりん地区があってというダークなイメージは変わらないので、まずは違法な部分を取り締まるとかはあるかもしれませんね。でも、こういうことをすると最後まで不法なところが残るんです。出会い喫茶だって、摘発されても同じ場所で同じ許可出してますから、あれはどうかと思います。

 ヘルスとかソープとか、デリヘルも許可制から届出制に変わったこともあって、営業する側のレベルも落ちたと思います。まずは、そういうところを先にやってほしいなというのが願望です。僕ら飛田の人間からすると、ほかに潰す順番があるだろと思いますけど。

開沼 なるほど。そして、現在2作目を執筆中だと聞いています。これからも実態を伝えていきますか?

杉坂 実態を伝えていきたいですね。次も飛田の話を書きます。もう少し見識が増えたら、飛田とはまったくシステムが違う松島、信太山の実態なんかも書けたらなと思います。

開沼 次回作をとても楽しみにしています。ありがとうございました。


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