タイ 2013年6月20日

タイに住む日本人ビジネスマンの相談
「会社に損害を与える社員をどうしたらうまく首にできますか? 首にしてから裁判で争うのでしょうか?」タイ人経理部長ブンが在タイ日本人の質問に答える【ブンに訊け!】

バンコク発ビジネス・生活情報誌『DACO』編集部のタイ人経理部長、ブン(女性)が日タイの架け橋となるべく日本人からの質問に答えます。

読者からの相談:命をかけて首にする……
(前略)他の会社はどうしているか、教えてほしいことがあります。
 それは賃上げ交渉の末、ロックアウトしたことで賃金が貰えず、スゴスゴ戻ってきた社員たちのことです。
 会社には居づらいから、自分からは退職せずに、会社に損害を与えます。(中略)首にすると、端から裁判所に訴えて、賃金の6~7カ月分の支払いを請求してきます。内訳は、就職して1~3年未満の社員の場合で、「退職金」3カ月分+「30日前に退職について言わなかった」として1カ月分+「心が痛む」1~2カ月分+「有給の買い取り」です。裁判所も会社側が与えられた損害の証拠を提示できない以上、半分払うようにと言ってきます。(中略)
 こうした社員は、できれば即刻首にしたいのです。タイの会社は損害を与えられた証拠を手にするまで首にしないのでしょうか? それとも首にして裁判で争うことを選択するのでしょうか? 
もしくは何か良い方法はありますか? (ミヤさん)


【ブンからの回答】

首にするまで2つのステップ

 DACO編集部の顧問弁護士のノパクン氏に聞いてみました。

 彼が実際に労使問題で顧客(経営者)にアドバイスするのは、次の2つだそうです。

①まず、良くないことをした社員の証拠を集めてから、その社員を呼び出して、証拠を提示し、「1年以内にまた良くないことをしたら即座に首。退職金は払わない」という文書に署名をさせる。

②その場に2人の証人を用意しておき、もし署名を拒まれた場合、証人に署名してもらう。

 この文書は裁判になった場合、会社側に有利に働くそうです。

払わなければ、裁判は必須

 タイの「労働者保護法」は、労働者は会社よりはるかに弱者であるとみなし、労働者に同情的です。

 ただし、良くないことをしたという証拠を提示できない場合でも、給料の6~7カ月分を払えば、即時解雇することができます。耐える必要はありません。

 会社に大損害が生じかねないことをされた場合は、退職金など払わずに、即座に首にしたほうがいいこともあります。首にされた人物は労働局に訴えますので、あとで証拠を固めるなりして裁判に臨みます。

お粗末な残業代請求争議

 裁判の例をご紹介します。ノパクン氏が顧問をしている建設会社が、契約していた5人のエンジニアに訴えられたことがあったそうです。残業代が1年以上支払われていないというのが理由です。

 会社は毎月決まった金額を滞りなく支払っていたので驚きました。そして、会社としては払わなければならないものは払うが、1年分の残業を証明するものは受け取っていないから今更払えない、と突っぱねました。

 すると5人は「証明書ならある」と言って後日、5人の365日分の「残業証明書」なるものを提出しました。ところが、精査したところ1年前の日にちにもかかわらず、紙に汚れがない。ボールペンの色も太さも同じもの。あきらかに数日で一気に作成した偽造と判明。

 その後、審判員が間に入って、ノパクン氏は交渉を続け、最終的に100万バーツ(約330万円)の要求額を計2万バーツ(約6万6000円)にしたそうです。

殺るなら確実にやれ

 労働者の権利は守られるべきものですが、会社に損害を与える者に対しては毅然と立ち向かわなければなりません。そのために顧問弁護士は顧問料さえ貰えればいいという、事なかれ主義では勤まりません。

 ミヤさんの会社に腕利きの顧問弁護士を雇い、戻ってきた社員と交渉してもらうのが一番です。

 会社側に立って交渉する弁護士は逆恨みされることがよくあり、脅しもあるそうです。ノパクン氏は、そうされた場合、「そうか。殺るなら確実に殺れ。さもないと次はお前だ」と相手に告げるそうです。

 タイでは、拳銃は所持許可証があれば誰でも、専門店で買うことができる。ウェブサイトでは「所持許可証を持っている」ことを前提に、その確認もしないで数千バーツで売買されたり、工業高校の学生が学校の工具室で模造したものが市場に出回ることもある。
 その結果、数千バーツで殺しを請け負う人間が出る。また、酒場で軍や警察の関係者とトラブルになると、酔った勢いもあってその場で射殺される、というような事件が新聞の社会面をにぎわす。タイでは発砲事件は日常茶飯事だ。
 写真は編集部にある「集中力養成用の」エアガン。迎え撃つためのものではありません【撮影/DACO編集部】


(文・撮影/『DACO』編集部)

 

 


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