思い×しくみ=自ら仕事をつくれる人

本田 僕の『あたらしい働き方』でも書いたんですが、プライドがない人や、自ら世界中の企業と東京ディズニーランドから<br />「楽しく働く」ということを考える―<br />『あたらしい働き方』本田直之氏×『ディズニーこころをつかむ9つの秘密』渡邊喜一郎氏 特別対談!【後編】仕事を作るのではなく、「何をすればいいですか」と待っている人には、そういう仕事は絶対に無理なんですよ。それは、働く側も認識しておかないといけない。

渡邊 待ちの姿勢はダメでした。というか、やらざるを得なかったんです。1000万人を集めるにはどうすればいいか。これもやらないといけない、あれもやらないといけない、とリストアップしていったら、やること山積で。

 集客に最も効果を発揮するのは、私が最初の研修でディズニーのフィロソフィーに感動したように、じかにディズニーを体験してもらうことだったんですよね。そこで、短いショーを全国で展開していったんです。あちこちの場所にミッキーが行く。プロのダンサーが踊る。これには、相当なインパクトがあったようです。

 そして翌日は、ミッキーたちが病院などの施設を訪問するんです。事前に地方のテレビ局や新聞社に連絡しておくと、間違いなく取材に来てくれました。そうやって、少しずつ少しずつ東京ディズニーランドの認知度を上げていったんですね。

本田 やっぱり、自ら仕事を作るというのは、そういうちゃんとした思いを持つ人が、集まらないといけないんですよ。

渡邊 そもそも会社へのロイヤリティはあまりなかったんです。それよりも、「いいものを作るんだ。ディズニーランドを成功させるんだ」というのが先にあって、そこからいろんなものを吸収していきましたね。

 好きなことをやりたいがために、オリエンタルランドに入ったんです。本田さんの『あたらしい働き方』にもありましたが、私にとってはプラットフォームだった。会社というものを利用させてもらって、自分で仕事をしながらノウハウを身につけて、10年を区切りで辞めたんです。10年と最初から決めていましたから。辞めて、違う好きなことをやろう、と。それで、車が好きでしたから、日産自動車に行ったんです。

本田 そういえば、東京ディズニーランドの中で働いている人が、どうしてあんなにニコニコと楽しそうなのか、びっくりする話が書かれていましたね。

渡邊15分ルールですね。「列はこちらでーす」とか「行ってらっしゃいませ」とか、炎天下のもとでも、キャストはみんな最高の笑顔で接してくれますが、あれは15分で役割をローテーションしているんですよね。パレードは別ですけど。15分交代で役割を入れ替わっていって、6回入れ替わると15分の休憩が入る。昼休みなら30分。

 きっと誰か、これまでの本で書いているのかと思ったら、誰も書いてなかったんですよね。だから、もしかすると、マーケティングの人間が書いたりしちゃいけないのかもしれない(笑)。

 他にも、なぜ夢の国なのか、なぜ人を感動させるのか、なぜこれほどリピーターが多いのか、なぜ飽きられないのか、なぜ3000円のポップコーンが売れるのか、なぜ次々にアイディアが出るのかなど、これまでの本にはまったく書かれていなかったような内容が、たくさんあるかもしれないです。

本田 貴重な本ですよ。やっぱり1500円で出しちゃいけなかった(笑)。