かの国は右傾化しているのではないか――。最近、日本をこのように評する海外メディアが増えている。確かに、国家の新しい形を問い直そうとする安倍政権、従軍慰安婦問題発言を行った橋下徹・日本維新の会共同代表らの言動からは、「強い日本をアピールしよう」という意思が読み取れる。領土問題などを機に、一般国民の間にも「強い日本」を求める声が盛り上がりつつあると言われる。それは本当だろうか。実際、市井の人々は「強い日本」についてどう感じているのだろうか。聞き取り調査の結果を基に、「強い日本待望論」の背景を見据えたい。(取材・文/フリーライター・宮崎智之、協力/プレスラボ)

「強い日本」を想起させる公人たちの言動
日本人の国家観は本当に変わりつつあるのか?

 かの国は右傾化しているのではないか――。

 最近、日本をこのように評する海外メディアが増えている。

 民主党政権が倒れ、自民党の安倍内閣が発足したことによって、日本の雰囲気が変わり始めている。大胆な金融緩和を盛り込んだ「アベノミクス」によって株高・円安が進み、足もとでは市場が変調をきたしているものの、安倍政権は参院選に向けて盤石な支持率を維持している。

 そんななか目立ち始めているのが、「国家のあり方」に関する言説だ。安倍政権では憲法96条の改正や国防軍の設置など、新しい国づくりの構想が立ち上がっている。また、閣僚や一部の議員による靖国参拝論議や歴史認識発言も、一時話題に上った。こうした状況のなか、米国の議会調査局が、安倍首相を「強固なナショナリスト」と指摘して波紋を広げたことも記憶に新しい。

 一方、日本維新の会の橋下徹・共同代表によるいわゆる「従軍慰安婦問題発言」も大きな議論を巻き起こし、日米間の外交問題にまで発展しつつある。政治家ばかりでなく、メディアで「強い日本」を主張し、政治的な発言を行う有識者や文化人も、以前より増えた観がある。

 これまでセンシティブなテーマと認識されてきた「強い日本」を想起させる議論に、憶せず踏み込む公人が増えたことからも、確かに「日本は変わりつつある」という印象は強まった。