ハウツーは世にあふれている
試し続けることが課題解決への近道

松田 あたりまえですが、夢は念じているだけでかなうものではありません。夢を実現させるには、具体的な力が必要です。私は子どもたちに、その力を身につけさせてあげたいと思っているんです。

為末 たとえばどんな力ですか。

自分をダメだと思う高校生は65%!<br />夢を持つことを許されない子どもたち松田悠介(まつだ・ゆうすけ)
全米で就職ランキング第1位になったティーチ・フォー・アメリカ(TFA)の日本版「ティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)」創設代表者。大学卒業後、体育科教諭として中学校に勤務。体育を英語で教えるSports Englishのカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、外資系コンサルティングファームPricewaterhouseCoopers にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職、現在に至る。世界経済会議Global Shapers Community メンバー。経済産業省「キャリア教育の内容の充実と普及に関する調査委員会」委員。

松田 まず大切なのは課題解決力じゃないかと。為末さんはコーチをつけずに一人でやっていた時期がありますよね。誰にも答えを教えてもらえない状況になったとき、自分で課題を解決していく力がないと、どうにもならない。為末さんの場合は、どうやって課題解決力を磨いてきたのですか。

為末 課題を解決するには、まず課題を発見しなければいけません。そのためには、まず自分がやりたいこと、なりたいものを明確にする必要があります。それらと現状とのギャップこそが課題になります。

松田 まず課題を発見するのが大切なんですね。

為末 そうなんです。そして課題が見えれば、それを解決するハウツーは世にあふれているので、解決方法を見つけることは難しくない。むしろ厄介なのは、解決方法をどこまでやれるのかということでしょう。解決方法の中には、「毎日3時間以上はやりましょう」というような根気や時間をかけることが必要なものもある。そうなると解決方法を見つけるより、やりきることのほうが課題になってくる。

 ですから粘り強くさまざまな解決方法を試すことが大事だと思います。陸上の場合はタイムに反映されるので効果のある、なしがわかりやすく、そして現実にはほとんどアプローチが無駄に終わります。そういう状態でも、課題解決に向けてさまざまな方法を試し続けられるかどうか。これも重要な点です。

モチベーションは長く続かない
短期の目標設定で気持ちを盛り上げる

松田 粘り強く続けるためのコツはありますか。たとえば目標設定を間違えると、モチベーションが下がったりしそうですが。

為末 一生懸命やれば到達可能なところに目標を設定するといいと思います。タイムスパンが長すぎないことも大切。数年先よりも数ヵ月先、数週間先とか。モチベーションが持続する時間にはかぎりがあるので、ある程度の期間で達成できる目標を設定して、一つ一つ達成していった先に大きな夢がつながるという形にしたほうがいい。

 一方、目先の目標だけでも気持ちが続かないと思います。だから、たとえばですが「世界一になりたい」という大きな目標と、「これができるようになろう!」というような、一つ一つ積み上げていく目標の二本立てでやると、モチベーションが続くんじゃないかなあ。